文【ささやこ2】

□ごはん
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昔の人は言いました。
『まず白米ありき』と。

「いや、言ってねーから。っていうか、それ弥子ちゃんの座右の銘だろ」
力説したら、笹塚さんはいつものやる気なさそうな顔で呟いた。
「…そうですけど」
ちょっと膨れるのにはワケがある。
だって。
「ご飯食べたくなったら、レンジで2分って、お米に失礼ですよ!」
確かにお手軽だし、不味いとは言わないけど。
昔みたいに釜で、とも言わないけど。
「けど、うちの炊飯器もう5年ぐらい使ってないしな…」
「…じゃあ、笹塚さんがご飯食べたくなったら私が家から持って来ます…!!」
意気込んで答えたら、笹塚さんは唇の端を持ち上げた。
「別に構わねーけど、それ結局うちで温め直さなきゃいけないよな」
う。
なんだか今日の笹塚さんは意地悪だ。
じゃあどうしたら良いんだろう…と、暫く考えた末に浮かんだ名案に、私は彼を見上げた。

「じゃあ、今度から私が炊きに来ます!!」

笑いながら告げたら、笹塚さんは一瞬だけ軽く瞳を見開いてから、笑みを深くした。

あれ?
まさか…ううん、もしかして。
「笹塚さん…」
「ん?」
そんな爽やかに誤魔化そうなんて、駄目です!
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