短編集

□rond et rond
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ロン エ ロン

初めて聞いたその言葉は、理解不能なものだった。

最初は英語か?と思い修先生に聞いたが、分からん。と即答された。

実は日本語で三字熟語だったり?と頭の中に沸いてきたので文彦先生に聞いたが、違います。とあっさり返ってきた。

もとから集中力があったわけでもない俺は、10分で諦めたのだった。



「で、俺に代われと」
「泳人なら分かるかなぁって」

何時だか耳にした言葉が気になって、それは何語か調べるという変な問題は、泳人に代わってもらった。
変な問題って言っても、俺が作り出してしまったものなのだが。
けど、泳人なら俺より頭良いし、勘が良いし…って、俺ダメダメじゃんか。

「…《ロン エ ロン》であってる?」
「うん」
「……面倒臭いなぁ…」

泳人は明らかにダルそうな顔をするが、そんな顔でも俺はキスをしたくなる。
キスして不機嫌を取り消す。
そしてその後イチャイチャ!
俺の人生って幸せじゃないか!

「なんて顔してんのハジメちゃん…」

彼の一言で緩んでいた頬が元に戻る。
翠色の目と視線が混じれば、自然と笑顔になる。
泳人って実は笑顔の魔女なんじゃね!?

「ハジメちゃーん…どんな妄想してんのかは分からないけど、ここ人前だよー…」
「へ?」

あ、泳人怒ってる。
絶対怒ってる。
泳人って腕組んで怒ると超怖いんだよな…。
笑顔の魔女から恐怖の魔女に大変身だ。

「とにかく、言葉調べは俺がやっておくから、ハジメちゃんは仕事に戻って。この後2年のC組が数Uだったはずだよ」
「はぁい」

泳人の恋人としての俺も大切だけど、数学の先生としての俺も大切。
流石に仕事せずに泳人とラブラブは、失礼過ぎる。
泳人も俺も、お互いの授業が何時限目にあるかってことはバッチリ覚えている。
実のことを言えば、この次の時限泳人が授業ないことを知って代わってもらったのだ。

「じゃ、泳人よろしくー」
「…ハジメちゃんも授業頑張って…ね」

鍵当番やらなきゃいけないのに、と泳人のぼやきが聞こえた。



ハジメちゃんの姿が階段の方へ消えたのを見届けると、俺は職員室へ大量の鍵を取りに足を進めた。


ジャラジャラと廊下へ響く鍵の音を不快に思いながらも、謎の言葉の解決策を考える。
辞書で調べる?人に聞く?
やっぱり面倒臭い。
今頃生徒と雑談しながら授業をやっている恋人に恨みを覚えた。


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