短編集

□また、ここで一人
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―それは、冬の寒い日でした。


「セシル、大丈夫?」

僕は、あまりにもアコーディオンを弾くのに夢中すぎて、一晩中ひいていました。
そのせいで、僕は倒れてしまい、そんな僕を助けてくれてのは若さんでした。
ただのアコーディオン奏者とトップアイドル。
そんな二人の間、ひとつの感情が生まれました。



「セシルあったかい」

若さんの家で(今の彼は一人暮らしらしい)さっきから若さんは僕を抱きしめている。
僕も彼の背に腕を回す。
ぎゅうっと、絶対離れないように。

ガシャン、

何かの落ちる音。

「だめ、だめです」

若さんの意味の分からない制止。
僕は何が落ちたのかを見に行こうとする。

「それ以上、離れないでください」
「でも、」

僕が反論いしょうとした途端、視界がグルリと変わる。
フワフワのクッションの上に、頭が乗る。

「行かないで、ください」

彼は、泣いていた。
我慢強くて、やさしい彼が、泣いていた。

「若…、涙…」
「……分かってます…、お願いだから、それ以上はなれないでください」

片手で僕を押さえ、もうひとつの手で涙を拭う。
すごく、悲しそうな顔をしている。
途端、僕の首に手がのった。
そしてそれは、だんだんと首を絞めていく。

「……ぁあ、……ん…」
「…泣きそうな顔で、笑わないでください…」

嗚呼、僕は笑ってるのかな。

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