短編集

□君といた時間
1ページ/2ページ


俺も、あいつも、愛し合っていた。
はずだったのに。
いつの日からか、あいつは壊れた。

「……ぅ、………あぁああっ!」

血がこぼれていく。
もちろんそれは、俺の身体、俺の血。
目の前には、

「せんせぇー!すっごいキレイですよー!」

狂ってしまったアイツ。
手には、どこから持ってきたのだろうか、サバイバルナイフ。
あいつはさっきからそれで、俺の身体に浅いとはお世辞でも言えない傷を増やしていく。

「せんせぇは俺のもの。身体も命も」

いつ、そんなことを決めたんだ。
身体はともかく、命までアイツに捧げた覚えは全くない。

昼間のアイツは普通だった。
普通に会話して、普通に笑いあって、普通にキスをした。
いつから、アイツ―ハジメは狂ってしまったのだろうか。
俺の家に来る約束をしたときからか?
「またな」を言ったときからか?
それとも…

「何、考えてるんですか?」

目の前には、完全に狂った恋人。
サバイバルナイフを振り上げて……


バタッパタポツ……

「いっ!!……なんでお前は…」
「…なんでそんなことを聞くんですか。せんせぇは俺のものだからでしょ?」

誰が、何が、ハジメをこうしてしまったのか。
―俺、か?
いけないのは俺か?
狂った理由は、俺……?

「…ハジメ、俺をこうして楽しいか?」
「もちろん。先生が俺の好きな色で染まってくの、凄い嬉しい」

だって、先生は俺のものって周りに教えてるみたいでしょ?
その言葉とともに、また俺に傷が増えた。

「……ハジメ…悪かった…」
「なんでせんせぇが謝るんですか?…なんかせんせぇに謝られると、気持ちいいかも」
「なっ!!」

だめだ、もう、後戻りはできない。
自分で帰り道を塞いでしまった。

「……何が、お前をそうさせた…?」
「…………何ですかね…せんせぇじゃないですか?」

嗚呼、やっぱり。
いけないのは自分。

「……、なんで…?」

血が抜けていく。
頭がグラグラ、フラフラ。
ハジメはこれを望んでいたのか?
多分、違う。

「…先生といる度、こんな、こんな風に先生を血まみれにする感情が、出てきて…」

いけないのは、


俺と、


時間。



君といた時間
(あなたを自分のものに、俺色に染めてあげる)



アトガキ→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ