GUNDAM SEED

□DESTINY OUTSIDER
第4話「世界が終わるまでは」
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「シグー、着艦しました」
「わかったわ。パイロットにはブリッジに上がらせて」
「了解です」

キールはミラージュ・コロイド搭載型の戦艦から遁走し、ミネルバに着艦した。所属する部隊は違うが、ミネルバに配属されるはずのMSが強奪され、その強奪犯と交戦したからには、知る限りの情報を報告しなければならない。それに、シグーのエネルギーも限界に近く、補給が必要だった。

「失礼します。シグーのパイロットの、キール・イリアスです」
「待っていたわ。……シグナルロストした二機のゲイツRについては、何か知ってる?」
「……強奪部隊の母艦と思しき戦艦からの砲撃を受け、撃墜されました。不意を突かれての被弾でしたので、脱出すらままならなかったようです」
「……そう」

進水式すらまだ済んでいないというのに、もう二人のパイロットを失ってしまった。しかも歴戦の猛者と呼べる程のベテランパイロットを、である。この事実が、タリアに重くのしかかった。

「……そう言えば、シンから報告を聞いているけど、カオスのパイロットになる予定だったらしいわね」
「……、はい。私の所属する部隊での試験運用後、正式にミネルバに配属となる予定でしたが……」
「この分だとどうなる事やら、ね。ところで、あなたはどこの部隊の所属だったかしら?現状の戦力と今後の事を考えると、あなたの部隊の隊長と相談して、しばらくあなたを借りる事になるのかもしれないのだけど」
「なるほど……。私はイザーク・ジュール配下のジュール隊に所属しています」

ブリッジクルーの間に軽いどよめきが起こった。ジュール隊と言えば、プラント本国を防衛する部隊の一つであり、その実力はプラント随一と言われる程のエリート部隊である。

「ジュール隊、か。あそこの隊長は気難しいと聞いたけど……」
「少々気は短いですが、大丈夫ですよ」
「そう。ならいいけど……」

話題に一区切り着いた所で、デュランダルがブリッジに入ってきた。カガリとアレックスを伴っている所を見ると、医務室にカガリの様子を見に行っていたらしい。デュランダルの姿を見ると、キールはすぐさまザフト式の敬礼の姿勢を取った。

「ああ、そう固くならないでくれたまえ。楽にしていい」
「ありがとうございます」

キールが敬礼を崩したその時、オペレーターのメイリンが電子音に反応した。

「グラディス艦長……いえ、デュランダル議長!司令部より入電です!安定軌道上にあったユニウスセブンが移動しているとの事!24時間以内に大気圏に突入すると予測されます!」
「何だと?!……既にユニウスセブンに動いている部隊はあるか?」
「ジュール隊が、メテオブレイカーによるユニウスセブンの破砕作業を行うそうです。本艦もジュール隊の支援に向かえる距離ですが」
「ならば急行してもらう。グラディス艦長、良いかね?」
「了解しました。キール、あなたにも手伝ってもらいたいのですが」
「了解です。ジュール隊も参加している以上、拒否する理由はありませんから」

ブリッジはにわかに慌ただしさを増してきた。キールはもう一度敬礼をし、ブリッジを出て格納庫に向かった。





「さすが綺麗事は、アスハのお家芸だな!」
「何っ……?!」

展望ブリッジから格納庫に向かう途中、キールはシンがカガリに食ってかかっている所に出くわした。食ってかかっているシンの顔は憎悪に歪み、食ってかかられているカガリは驚いて唖然としている。

「君……君はオーブが随分と嫌いなようだが、何か理由があるのか。下らない理由で代表にそんな暴言を吐くなら……」
「下らないだって?!」

カガリを庇うように進み出たアレックスだが、結果はシンの怒りに油を注いだだけだった。歯を食いしばったシンの犬歯が、危うげなシンの攻撃性を物語っているようだ。

「俺の家族は二年前、連合がオーブに侵攻してきた時に死んだ。オーブは戦いを避ける事も出来たはずなのに、中立、中立ってそればかりで、国民の避難も満足に出来ずに……」

ぐっ、とカガリとアレックスの二人が言葉に詰まる。当時、オーブ侵攻戦の際には、二人共がそのただ中にいる。特にカガリはオーブの指導者的な立場にいたため、いつかシンのような人間から怒りと恨みをぶつけられるだろうとは思っていた。しかしまさかそれがザフトの軍人となっているとは。

「俺の家族はアスハに殺されたんだ。アンタの父親の、ウズミ・ナラ・アスハに!自分一人で自爆して責任を取ったつもりの、あの男に!英雄でも何でもない、ただの殺人者が!」
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