GUNDAM SEED

□DESTINY OUTSIDER
第2話「交戦」
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「こちらインパルス、シン・アスカ。そこのザク、戦えるなら援護してくれ。戦えないならミネルバに行け!赤い翼の新造艦だ!」
「……っ」
「こちらインパルス、シン・アスカ。そこのザク、聞こえないのか?!」

ザクに乗る男は考えた。護衛とはぐれ、止むを得ずこのザクに乗ったものの、自分が正規のザフト兵ではない事を明かすのは色々とまずい。

「聞こえるか、戦えるなら援護を、戦えないのなら赤い翼の新造艦、ミネルバに行け!ここは俺が引き受ける!」
(今はカガリの身の安全を最優先すべきだ。しかし、いくらGでも同じGを三機相手にしては……)

男は覚悟を決めた。今カガリを死なせる訳にはいかないが、自分を助けてくれた少年――喋り方や声の高さからして、どうもこの「インパルス」というMSのパイロットは少年のようだ――を死なせる訳にもいかない。

「こちらザクのアレックス・ディノだ。先程の援護を感謝する。こちらはまだ戦える。連携してあの三機を止めるぞ!」
「了解!」

シンのインパルスがエクスカリバーの柄を繋ぎ合わせ、一本の巨大な武器とした。アレックスのザクは再びビームトマホークを構え、目の前の三機を見据える。

「行くぞ!」
「おう!」

「どーすんだよスティング、あんなの予定にないぜ……?!」

「あんなの」――エクスカリバーレーザー対艦刀をアンビテクストラスフォームに組み、突進してくるインパルス。

「ネオの話じゃ新型は三機だ。チッ、連合の諜報部もアテにならねえな。ステラ!」

舌打ちしたスティングはステラに声を掛け、アウルのアビスの援護に入る。

「アウル、邪魔……!」

アビスを押し退け、ガイアが前に出る。アビスは接近戦、及び格闘戦に向いたMSではないため、より近接戦闘に秀でたガイアが前衛を務めるのは当然の事と言える。

「うえぇぇぇいっ!!」

独特の叫び声――奇声と言った方が正確かもしれない――を上げたステラは、ガイアを犬のようなMA形態に変形させ、インパルスに迫る。対するインパルスはアンビテクストラスフォームのエクスカリバーレーザー対艦刀から右手を離し、フラッシュエッジビームブーメランを抜き、投げつけた。

「っ!」

辛うじて避けるガイア。そこへ、合体している柄部分を切り離し、再び二本の対艦刀を手にインパルスが肉迫した。

「ステラ!」

ガイアをやらせはしないとばかりに、スティングのカオスが機動兵装ポッドを起動する。本体から切り離されたポッドからインパルスに向かってビーム突撃砲の砲身が伸び、ビーム弾を次々と吐き出した。しかし、シンもまた辛うじてこれに反応し、ギリギリのタイミングでの回避をやってのけた。しかし、機動兵装ポッドは一度砲撃すれば終わりという代物ではない。かわされたと見るや、すぐさま位置を変え、再びインパルスに対して砲撃を始める。

「くそ……っ!」

二機の機動兵装ポッドを器用に操り、シンを追い詰めるスティング・オークレー。その余りにも卓抜した操縦技術に、シンは舌を巻くと同時に違和感を抱いた。

(今さっき初めて乗った筈の機体を、どうしてこんなに上手く扱えるんだ?)

カオス、ガイア、アビスの三機は、インパルスと同じセカンドステージシリーズというカテゴリーに当てはまる。それらセカンドステージシリーズにはザフトの新技術がふんだんに盛り込まれ、アカデミーを上位で卒業したシンですら、インパルスを乗りこなすには長い慣熟訓練を必要とした。

(なのに……)

すぐ近くでアレックスのザクと一進一退の攻防を見せるアビスのパイロットも、目の前の犬のようなMA形態のガイアのパイロットも、まるで以前から乗っていたかのように機敏に乗りこなしているのは、シンの見間違いではないだろう。
そう考えながら戦っていると、突如眼前のカオスの足下が弾ぜた。

「?!」

不審に思ったシンがアレックスのザクの方を見ると、ちょうどアビスの胸の辺りを蹴飛ばしている所だった。

「何をしている、シン・アスカ!今だ!」

怒鳴るアレックスの口ぶりから察するに、今起きたカオスの足下の爆発は彼の仕業らしい。恐らく、カオスにもガイアにもアビスにも気付かれずに、こっそりとカオスの足下にハンドグレネードを転がしたのだろう。もちろん、アビスと一進一退の攻防を繰り広げながら、である。

(アレックス・ディノ……こいつも普通じゃないな)

シンは内心アレックスの戦いぶりに脱帽しながらも、

「分かってる!」

と、荒っぽく言葉を返し、インパルスのバーニア・ペダルを踏み込む。背部メインスラスターから得た推力を真っ直ぐ前に向け、インパルスはハンドグレネードをまともに食らったカオスに殺到した。
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