蒼煌水晶

□気付かぬ心
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誰も居ない小高い神社。
身の穢れを祓って欲しいと小龍は其処に立っていた。
小龍はふと空を見上げる。

夜空に月は無かった。
暗い暗い闇夜。
心内に蔓延る醜い欲望も隠してくれる、絶対的な闇がそこには有る。

頬を撫でる風は木枯らしで、体温を奪って行く。
と、ほの暗い虚空からまあるい水滴が無数に地上にふり注ぎ始めた。

それらは学ランに吸い込まれ、重さを増す。
ただ冷たくなって行く躰に興味は無く、呆然と空を見続ける。
顔に当たる雨粒が、この酷い有り様の顔を…涙を、キレイに流してくれるような気がしたからだ。



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