蒼煌水晶

□たった一つの大切な時間
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温かく、柔らかい褥の中で、傍らに寝ている小龍の表情はとても幸せそうだった。

項羽は小龍の滑らかな黒髪に指を絡めながら懐かしい時代を思う。

あの時はまだ兄弟の確執もなく、平和そのものだったと。
小龍は項羽の後をちょこちょこと着けながら、事ある事に『お兄ちゃんみたいになりたい』と言っていたものだ。
それなのに小さいすれ違いを繰り返すようになり、何時の間にか修正不可能な程に溝が出来ていたのだが、最近どうにかこうにかそれを解消することができた。
そして、今は元の鞘に収まり、項羽はすれ違っていた時間を取り戻すように小龍と寄り添っている。
しかし、依然として反抗的な言動や名前でしか呼ばないのは、今までそれで身に付いてしまった事と照れ隠しの為であろう。


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