未来系

□発覚!!(2009/04/16)
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ティエリア・アーデ

完璧に整い、中性的…いや、無性的とも言えるほど、性差を感じさせない彼の容姿。
造り出された存在故か、その性質は真面目で一途。
潔癖な気性は、そういった事を超越している…というよりは、感情に対する経験値の低さ。
つまり、そちら方面にはまるで子供という事だ。

関係者は全員が全員、ティエリアをそう認識していた…が

そんなティエリアが、よもやフェルトに手を出していたとは…
意外すぎるにも程がある。

ミレイナですら驚いて、ポカンと口を開けている。

ついでに言うならある程度は知ってた筈のイアンだが『手を出す』意味合いすら知らなさそうなのがティエリア・アーデなので、その可能性は速攻で却下されたのだ。

「…あの、フェルト?」
しばらく全員沈黙したのち、口を開いたのはスメラギだった。
「はい」
「本当なの?」
「ええ、本当です。この間の定期健診で…今3か月位だそうです」
愛おしそうに腹部を撫でて、フェルトはふわりと微笑んだ。
「そう…」
幸せそうなフェルトの姿に、スメラギの肩から力が抜けた。
ついでにその他全員も。

「良かったですねぇ、グレイスさん」
「ええ。ありがとう、ミレイナ」
元気一杯なミレイナの祝辞を、フェルトは素直に喜んだ。
年下の少女を慈しむ、その微笑みは既に母親。
神を信じぬ武装組織に、聖母が生まれた様だった。

「…やってくれるね教官殿も」
呆れたようにライルは言って、ラッセの座るシートの肩に、脱力しきった肘を預けた。
「そうだな。アンタに…」
そこでラッセは口をつぐんだ。
『アンタに言えた義理か』というセリフは、あまりにも無神経すぎるだろう。

3か月前といえば、ライルはアニューと付き合っていた。
だけど彼女はイノベイターとして、CBを裏切り、ライルに愛していると最後に伝え…散った。

「ハハ…でもまぁ、よかったじゃないか。喜ぶだろうさ、教官殿も」
ラッセの台詞を読み取ったのか、ライルは曖昧な笑みを浮かべた。

「…仕方ない。祝ってやるとするか!!」
「そうね。おめでたい事ですもの」
整備士夫妻も笑みを浮かべて、新たな命を祝福する。そして…
「一発殴ってやりたかったが…」
「ダメですよ!!パパ!!」
「大丈夫よ。出来ないから」
「ミ、ミレイナ!! お前はパパに、ちゃんと言うんだぞ!! わかったな!!」
「パパ、何を焦ってるんですかぁ?」
「いや、だからだな…」

整備士一家の漫才に、スメラギは苦笑し、改めてフェルトに向きなおった。
「先を越されちゃったわね。でも、おめでとう。フェルト」
「そうだな。おめでとう、フェルト」
「オメデトウだな、フェルトちゃん。きっと兄さんも喜ぶぞ」
「スメラギさん…ラッセさん…ロックオンも……ありがとうございます…皆さん」
フェルトの瞳に涙が滲む。
若い母親を皆、祝福した。

「フェルト・グレイス」
今まで無言だった刹那が、唐突にフェルトの名を呼んで、
「おめでとう」
皆と同じくそう言って、皆と同じく笑みを浮かべた。
「刹那…ありがとう…」

「あらら」
「泣くなよ。美人が台無しだぜ」
「やれやれだな」
「あー!!グレイスさん、どうしたですか!?」
「ったく…ティエリアの奴、やっぱり殴る!!」
「貴方…」

ついに泣きだしたフェルトを巡り、再び騒ぎが巻き起こる。

フェルトは嬉しかった。
どうしようもなく、嬉しかった。
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