001st

□綻び
2ページ/5ページ

「スメラギ・李・ノリエガ 全ては作戦の指揮者である、貴方の責任です」
厳しい顔で、ティエリア・アーデは戦術予報士に責を問う。
「ナドレを敵に晒したのは、お前だろ? ティエリア。ミス・スメラギばっか責めるなよ」
見兼ねたロックオン・ストラトスが、ティエリアを宥めにかかる。
「そうしなければ、やられていた」
「だとしても、お前にも責任がある。命があっただけでもめっけもんだ」
ティエリアの表情が厳しさを増す。
「…今後はヴェーダからの作戦指示を優先する。失礼」
反論出来なかったのか、捨て台詞のような言葉を残し、ティエリアはオペレーションルームを後にした。


そんなやり取りがあったと、アレルヤ・ハプティズムは耳にする。

『ティエリアにも責任がある』
ロックオンの指摘は正しい。
他に手は無かったとはいえ、ティエリアは敵に晒してしまった。
秘匿されるべきナドレを。

その少し前、アレルヤは敵に鹵獲され、
それを知ったティエリアは、きっと―


「ゴメン。前回の事は、僕にも責任がある」
「当たり前だ。敵に鹵獲されるなど、全く、万死に値する」

やっぱり怒っていた。いつも通りで、安心する。
だって僕は、これから

「はは、そうだね。だから、僕は撃たれても気にしないよ」
きっと、彼は撃った。
あるいは、撃とうとした。
僕が、キュリオスが鹵獲された、輸送艦を。

ガンダムの秘密を守るため。例え僕が、死んだとしても。

「…妨害された」
「え?」
ティエリアが口ごもるなんて、珍しい事もある。

「敵のMSに妨害されなければ、君ごとキュリオスを破砕していた」
ああ、やっぱりそうだった。
だけど、それでこそティエリアだ。

「だから悪かったってば」
謝罪しつつ、僕は笑って誤魔化した。
これからのミッションを考えると、よく笑えるなって、自分でも思う。

「…そういう事ではない」
「え?」
「搭乗時間だ」
「あ、うん」

どういう事だろうか?
ティエリアの言葉を、頭の中で反芻した。

レバーにつかまり、低重力下を移動する。
先を進む彼の表情は、わからない。

「人類は、ここまで愚かになれるのか」
「えっ、何の事…」
静かな問いに、今度は僕が問い返す。
もしかして、知っているのだろうか。

「何でもない…
もし、君がまた愚かな振る舞いをすれば、俺は容赦しない」
「…わかってる」

よろしく頼むと、僕は言えなかった。

このミッションで、もし万が一、僕が暴走したら…
いや、引き金を引けず、鹵獲されるような事になったら…

彼が守ってくれる。ガンダムの秘密を。

だけど、さっきの彼の言葉は…
もし無意識にでも彼が僕を、殺したくないと思っているとしたら…

そんな事は、頼めるはずがないじゃないか!!


僕は不安だよ…ハレルヤ

僕に、出来るだろうか

人革連の、研究施設への攻撃…
これから僕は、仲間を…兄弟を、殺しに行く

もし出来なかったら…僕が、引き金を引けなかったら
彼は、僕を…ガンダムの秘密を、守ってくれるだろうか

僕を、殺してでも
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ