1st終了〜2nd前

□Sleeping Beauty's(2009/06/06 完結)
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先の大戦で大破した、宇宙輸送艦プトレマイオス。
それでも生き残った者達は、此処‐CBの宇宙基地にて、組織の再建を進めていた。


ある朝、と言っても既に昼に近付きつつある時間帯

フェルトはティエリアの私室を訪れ、控え目にドアをノックした。
中にいる彼を、起こさないように。

何の反応もない、やはり眠っているのだろうか。

だが、少し考えパネルを操作し、緊急用のコードを入力。ドアのロックを解除した。
あまり褒められた事ではないが、理由を言えばティエリアも、そう厳しくは言わないだろう。

そして心配した事を伝えれば、きっと一言「すまない」と、少し俯いてそう言うのだ。
以前とは比べ物にならないほど、ティエリアは……そう『優しく』なった。

そんな事を考えつつ、フェルトはドアを開けた。
寝ているのなら、皆の言うとおり放っておいて戻ればいいが……

中の様子を窺うと、ベッドの上にティエリアの姿は、無い。
サニタリーのランプが、点灯している。

「ティエリア、いるの?」
起きているのなら何故来ないのか。
フェルトは訝しみ、サニタリーのドアを開けた。そして……

嫌な予感程良く当る。誠に非科学的な話だが、よく言ったものだ。


「じゃあ、あとは明日」
「そうだな……ティエリアの奴、明日は出てくるんだっけか?」

その日、仕事を終えたフェルトに、ラッセ・アイオンは聞いた。
頑強なこの砲撃士は、ティエリアよりもよほど、マイスターとして通用しそうだ。

「あ、はい。本当はもう1日位、休んだ方がいいそうですけど……」
「ついでに2.3日休ませとけよ。全く」
「……そうですね」

基地内の通路を進みつつ、フェルトは思った。皆、ティエリアを心配してる。
ラッセがああ言ったのも、当然の事だ。

2日前……

「ティエリア!?」
サニタリーの床、洗面台の下辺りにティエリアが横たわっていた。

抱きあげて揺すったところで彼の意識が戻る事は無く、平熱の低いその体が、今は異様に熱かった。
浅く速い呼吸に合わせ、薄い胸が弾む。白い顔は青く、だが部分的には赤く色づき、紅い瞳は固く閉じられ、目尻に光るのは恐らくは生理的な、涙。

どこかにぶつけたか引っかけたか、額から一筋血が流れ、滲んだ汗に同化していた。

すぐさま医療施設に運び込まれ、治療カプセルを出たと聞いたのが、2日後の今日の、つい先程。

「フェルト・グレイス、何か?」
自室に籠っていたティエリアは、インターフォンにすぐに応じた。
一応カーディガンの下に寝間着を着てはいるが、彼の後ろの机の上で、端末が起動している。
既に遅い時間なのだが、フェルトの予想通り、まだ起きていたらしい。

「夢、見たの」
「夢?」
「パパと、ママの。だから」
それは嘘だ。夢どころか、フェルトは眠ってさえいなかった。

「だから……一緒に寝ても、いい?」
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