001st

□守る
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何がしたい?
どうすればいい?
どうしたら、失敗を取り戻せる?

『自分の思った事』

わからない…
そんな事は、考えた事もなかった。

『人間』は、いつもそうしているのだろうか…
失敗を恐れずに?
出来るだろうか…自分にも。


「ティエリア、いるか?」
「…ロックオン?」
数時間前ロックオンに『部屋戻って休めよ』と言われたものの、自室にいても中々寝付けず、ティエリアは自問自答を繰り返し、そのまま深みにはまっていた。
わざわざ確認しに来たという事は、恐らく予想の範疇だったのだろう。

「まだ寝てなかったのか」
ティエリアの自室を訪れ、彼の顔を見るなりロックオンは軽い調子で、夜更かしの子供を諌める様に、笑いながら言葉をかけた。
だがその右目は、眼帯に覆われて今は見えない。ティエリアはつい俯いて、彼の顔から視線をそらしてしまった。

「ま、とりあえず座れ」
肩を押してティエリアを促し、2人で寝台に腰かける。

不思議な感覚に、ティエリアは戸惑いを覚えていた。

ロックオンに傷を負わせ、尚且つ気を遣わせている。
一体どれだけ、迷惑をかけたら気が済むのか…

だが、決して気が滅入るだけではない。
ヴェーダに拒まれ、完璧に不完全な存在となった自分を、ロックオンは『人間』として、マイスターとして、まだ認めている。
受傷の原因となった自分に、失敗は取り戻せばいいと、そう言ってくれた。

暗闇の中で見つけた光。彼なら自分に、道を示してくれるかもしれない。
どうすればいいか、教えてくれるかもしれない。

頭の上に、不意に感じたグローブの感触。
ティエリアの中で圧縮されていた安堵感が、急激に解凍された。

「ティエリア?」
ロックオンの声が、遠い―



…全く困った子供だな。
ティエリアを寝台に横たえて、ロックオンは苦笑した。
不遜な態度はどこへやら、寝顔は年相応にあどけない。

いま鏡を見れば、アレルヤに似てるのかもしれない。
困ったような笑顔を浮かべ、そんな事を考えていた。

『ヴェーダの人形』
ティエリアをそんな風に例えたのは…そう、クリスティナだ。

別に悪意のある発言ではない。
彼女も確か、困ったように笑って、呆れたようではあったが、どちらかと言えば堅物の弟に対するような、心配するような、そんな感じだった。
いかにも姉御肌のクリスらしい。

だが、ティエリアは人形ではない。
こんな風に悩み、眠れないほど苦しんでもがく姿は、とても人間じみていた。

ロックオンに促され、ティエリアはようやく眠りについた。
こんな風に頼られるのは、素直に嬉しい。だが、いつまでも出来る事ではない。

今は、まだいい。
だが、いつ敵が現れるとも限らないのだし、それに…
ロックオン自身、この状態でいつまで生きられるか、保障出来たものではない。

ティエリアが生き抜くためには、一人で立てるようにならなくては。


…ロックオン?

ティエリアが目を覚ました時には既に、ロックオンは姿を消していた。

暖かかった。彼がいれば、安心して眠る事が出来た。
ヴェーダはティエリアを裏切った。拒否し、縋る彼の手を、強引に振りほどいた。

だけど彼なら…ロックオン・ストラトスなら…

彼は自分を守ってくれた。だから今度は…

「彼を…守る」
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