001st

□喪失
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「ゴメン、開けるよ、ティエリア」

−ティエリアが出てこない

その知らせに、アレルヤ・ハプティズムは一人、彼の乗る機体‐ヴァーチェのコンテナへ向かった。
共に向かおうとした、刹那を制して。


そして開かれたヴァーチェのコックピット。
ティエリア・アーデはそこにいた、が…

「ティエリア?」
何だろう…この感じは…
アレルヤの指先からゆっくりと、体全体が冷やされていく…

…生きてる…よね?
ティエリアは膝を抱え、アレルヤが触れても身動き一つせず、何の反応もない。

一つだけ…彼が生きている唯一の証し−紅い瞳だけが膝に埋められたヘルメット越しに、少しだけ輝き、視線だけでぼんやりと、アレルヤを見上げ、やがて興味が無さそうに、伏せられてしまった。

一気に、背筋が寒くなった。

「ティエリア!! 僕だよ、アレルヤだ!! わかる? ねぇ、ティエリア…」
焦って呼びかけてみるが、ティエリアは何の反応も示さない。
瞳を閉じたまま、じっと、蹲って…

信じられないという思いが、アレルヤの脳を巡る。
ティエリアが…折れた?

理解したくない…だけどこれは、本当に? どうして…ティエリアが…
ティエリアはもっと…そう、『強かった』
なのに…何故?

そう、常に強気で、良くも悪くも『正しい事』を躊躇いなく実行する。
誰よりも迷いなく、進んで踏み込んでいく『強さ』
それが、アレルヤから見た『ティエリア・アーデ』だった、筈…

そのティエリアが、こんな…簡単に

だけどどこかで、理解している。
なぜ、彼が折れてしまったのか、コックピットから降りてこなかった、その理由を。

彼の『強さ』を、見誤っていた事を。


彼は…ティエリアは待っていたのだ。
この、閉鎖された空間で。

事実を認められず、呆然としたまま思考を、心を止めて、待っていた。
4機中最大の重武装を誇る、巨大なヴァーチェのコックピット‐堅牢な箱の中で。

巣の中で待つ雛鳥のように、縮こまって、親鳥−ロックオンを待っていた。

だけど、やって来たのは、コックピットを開いたのは、アレルヤだった。


「ティエリア…君は…」

雛―
ヴェーダの籠に囚われ、自ら羽ばたく事を知らない『子供』
羽を与えた、飛び方を教えた…いや、教えかけていた存在は、失われた。

彼の祈りは、彼の願いは…叶う事は無い。永遠に…
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