物語

□Another : Wing
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 絶え間なくぎっこん、がちゃんと機械音の響く部屋で、悶々と頭を抱え続ける少年一人。

「おい、キミー」

 ドアの蝶番が軋む音さえ機械音にまぎれて、しかし訪問者の大声が彼に聞こえなかったはずは無いのだが。

 悩める少年から、返事はなし。

「キミー、……ったく、せっかく速報を届けてやろうと思ったんだが、なんだその態度は」

 ドアの前に立つのは筋骨隆々の逞しい男。声も太く、男前。
 よくみれば少年と男、似たような形の作業着を着ている。

「なに、目の前で人がさらわれたぐらいのことで一々めげるんじゃない。そんなんでは、ほらお前、目の前で同胞の上半身が吹っ飛ぶ戦場をだな、どうやって前を向いて生き残っていく?」

 心なしか、少年の猫背に拍車がかかったような気がする。

「……うおっほん、いいか、それじゃ本題に入るぞ。アンが見つかった」

 ぴくり。
 少年の背中から伸びた一対の翼の、右側だけがちょっと反応した。

「ドルラのほうのでかい都市で、橋の下に転がってたらしい。骨折したって聞いたがとりあえず生きてるらしいぞ。良かったな」

 少年はそれでも動こうとはしなかったが、背中の翼だけが素直に緊張を解いてひゅるりらとしおれた。


 
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