物語
□Another : sky
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背中の痛みに目を覚ます。
寝ぼけた頭を振って、彼女は立ちあがろうと身体を起こしかけてごろん、と床に転がった。
立てない。
何かが邪魔をしている。
手首がいやに痛いので見ると、鋼鉄の輪っかで両手首が繋がっていた。
「手錠……」
こんなものは交番と、王子の部屋でしか見たことがなかった。
「おはよう、お姫様」
聞きなれない声に顔を上げると、若い男が一人、立っている。
はてさて、自分のような何でもない子供を捕まえておいて、お姫様とは何事でしょう――と彼女は首を傾げた。
どこか部屋の隅のほうで、唸るようなモータ音が聞こえる。
「背中が痛い」
彼女はずいぶん不服そうに顔をしかめて言った。
その物怖じしない態度に一瞬青年はおや、と表情を変えたけれど、今度は満面の笑みになった。
「本当は寝床まで運ぼうと思ったんだけどね。あんまりにも寝相が悪くて」
彼女はまだ寝ぼけた顔をしている。