なると3

□はじめまして!
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裏でこっそりと暗部に在籍するナルトと、同じくカカシは前日まで休みなく、まさに馬車馬のように働いていた。
そして漸く、久しぶりの休暇をもぎ取った。

休暇は三日。

連休など実に一年振りで、二人はまず一日目は惰眠を貪ろうと言う事になり、二人が死の森に幻術や罠で結界を張った中に建てた家で心地好い眠りを味わっていた。

そして、夜が明けて暫く経った頃。ナルトはカカシ以外の気配に深い眠りから意識を浮上させ、無意識に枕の下に仕込んだクナイを握る。


ヒュッ!


クナイが空を切る小気味良い音がした。


「クナイ投げるなんて酷いよ〜、ナルくんv」


見ないで投げたクナイは不法侵入である気配の持ち主に襲い掛かった。
だが、上忍所か暗部すら避ける事が困難なソレをいとも容易く受け止められてしまう。

当然、かなりの手練れと判断し、ナルトは殺気を高めた。


「……ダレ、アンタ」


漸くまともに壁際に佇む男に目を向ける。

雨戸の閉められた室内は朝日が差し込んでいても暗い。だが、男の金の髪と蒼い瞳は暗がりの中にあっても確認できた。


「アンタなんて、パパvって」
「ん〜〜〜、ナルトォ?なに殺気出してんの〜?もっとゆっくり寝ようよ」
「ちょ!?」
「なっ!!??」


男の言葉は布団の中からにゅっ、と伸びてきたカカシの腕と言葉によって遮られ、寝ぼけているらしいカカシに捕われたナルトは、カカシの胸の中へと倒れ込む。


「カカシ!こら!」
「…カ・カ・シ?」
「ん〜、あったかい」


もぞり、と器用に布団から顔だけを出し、ナルトの身体に擦り寄る。
誰とも素性の知れない者が不法侵入しているというのに、呑気に二度寝をしようとするカカシを起こそうとするが、更に布団へと引きずり込まれていく。

その光景に、青筋を立てたのは不法侵入の男。


「コラ、カカシ!!!」
「ふへぇ!?」


突然怒鳴られたカカシは飛び起きた。


「え?…は?……ミナト先、生???」
「カカシくん。まさか、よもや君、僕のナルくんに手を出してやいないよね〜〜〜!?」
「ナルトの身体で俺が知らないトコロなんてありませんよ。お・と・う・さ・ん」
「っ!コロス!!!」


カカシはわざとミナトを煽るような事を口にし、ミナトはそれにまんまと乗せられ殺気を高めていく。


「お〜い。なにがどうなってんだ〜???」


四代目火影、ミナトを見た事がないナルトは目の前の男が誰なのか分からない。
結果、二人の間で首を捻り、不思議そうに尋ねるしかなかった。


「カカシの知り合いか?でもなんでこの家に入れるんだ?」


死の森の奥に位置するこの家に来るには命懸けで罠や幻術をかい潜るか、ナルトお手製の通行証(お守り袋型)を持つ者のみ。
しかも家に入る為にはカカシとナルト、どちらかが家に招き入れなければ何人(ナンピト)たりとも入る事は叶わない。

その為、ミナトがどのように入ったのか不思議でならないのだった。


「ナルト。この人は四代目火影で」
「ナルくんのパパだよ〜v」
「………冗談?」


俄かに信じられない言葉に、ナルトは混乱をきたした。


「冗談じゃないよ?僕は四代目火影であり、波風ミナト。れっきとしたナルくんのパパなのだ」


えへん!と胸を張り、宣言したミナトにナルトはカカシを見る。


「カカシ!?」
「非常識だよね?幽霊のクセに朝に出てくるなんてね?」
「幽、霊…」


ポカンと呆れたのか理解しきれないのか、ナルトはミナトをもう一度見遣る。


「ナ〜ルくんvV…へぶっ」
「幽霊といえどこの結界は通れませんよ。ふっふっふっ」


なにもない空間の筈だが"なにか"に阻まれ、透明な壁に激突したようにうめき声を上げたミナトに、結界を張った主、カカシが勝ち誇ったように胸を張った。


「おのれカカシ!こんな結界!!」
「甘い!」


結界を解いたミナトにカカシはすぐさまクナイを放ち、臨戦体勢をとった。


「………なんなんだ」


壁が抉れ、柱が折れ、天井に大穴が開き、瓦が吹き飛ぶ。


「まったく=3」


被害が及ぶ前に、自分の周りに強固な結界を張ったナルトは布団の上で胡座をかいて溜め息を吐くと、二十代位の青年に変化し、一つの巻物を取り出した。
巻物には緊急呼出し用と書いてある。


「口寄せ!」


ドロンと煙りを上げて出てきたのは…。


「え!えぇ!?なん、どこココ!?」
「ウルサイ。黙れテンゾウ」
「痛っ!?そ、総隊長!?」


知らない場所に強制召集(口寄せ)されたのはラフな恰好でクナイを研いでいたらしいテンゾウ。
自室からいきなり知らない場所へ出たのだ、彼の反応は尤もだろう。
だが、そんなテンゾウの心境などお構いなく、殴って黙らせる。


「任務だ」
「え?」
「この戦闘が終わったら家を直せ」
「せ、んとう???」


そこで漸く、テンゾウは自分が結界の中に居て、外がさながら戦場のような様相である事を知る。

ただ呆然とするテンゾウに構う事なく、ナルトはまた数本の巻物を取り出すと再び口寄せをする。

先程同様、突然強制召集された二十人程の暗部の面々は慌てふためく。しかし彼等はテンゾウとは違い暗部服や面、装備などしっかりと纏っていた。


「今日お前等にやってもらう演習が急遽変更になった」
「総隊長!?」


目の前に寝間着だろう浴衣を纏い、布団の上に座す総隊長ことナルトに気付いた暗部達は慌てて背筋を伸ばす。


「演習ランクはAから特Sに変更。内容は、後ろで戦ってるバカ二人を止める事」
「後ろ…?」


なにやら騒がしいと気にはなっていた背後を振り返る面々。


「「「「ひぃっ!!??」」」」


そこは戦場か?はたまた地獄か?といった有様だった。


「じゃあ頼んだからな。俺は寝る」
「え!?ちょ、総隊長―――!?」
「あ。家は良いが、くれぐれも"庭"を傷つけるなよ?」
「庭?」
「!!!」


"庭"と称されたそこは…最早庭という範疇を超えていた。


『これは庭じゃない!庭園ッス!!!』


白砂に綺麗な渦巻き模様。
枝垂れ桜や梅、藤といった木々が植わり、四季折々の花が植わっている。


「俺のお気に入りだからな」


そう言い残し、さっさと布団の中へ潜ると、ナルトはヒラヒラとテンゾウ達に向けて任せた、と手を振るのだった。



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