アンケ小説
□大切なのは、貴方だけ
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この世は、なんて…理不尽なんだろう。
「なんか用だってば?じいちゃん」
「ナルト…お主に下った命を言い渡す」
「……」
「三日後の宵の口、森の奥深くに造られた結界壁に封印されよ」
「…決定かよ」
「ナル」
「用はそれだけ?じゃ」
苛立つ心のままに、俺はそれまで被っていた偽りの"ナルト"を脱ぎ捨てた。
「ナルト!?」
火影のじいちゃんが驚きを隠す事もできず俺の名を叫び、呼び止めるが止まりはしない。
なんでこうなったのだろう?
偽りの仮面で世間を欺いて生きてきた俺への罪か?
それとも、俺を殺しに来た暗部を返り討ちにして、しかもソイツの振りをした代償か?
「お、ナルト。どうした?」
「カカシ先生…」
それとも。
この、里の至宝と言われるカカシを…好きになった罰か…?
「ナルト?どうしたの?」
「…」
カカシにだけは、嘘偽りない俺を曝した。
九尾の護衛と称した監視者で、里にとって"なにか"不都合や不利益、危機があれば殺すよう命じられているだろうこの人に…すべて。
殺されるかもしれなかった。
でも、もし殺されるのだとしたら…カカシが良いと、そう思った。
「ナルト?」
「っ、カシ」
頬に伸ばされた手を掴み、情けなく震えた声でカカシの名を呼べば、まるで重みなどないかのように軽々と抱き上げられる。
「ちょっと待ってね?」
そう前置いてカカシは瞬身の術で移動した。
見慣れたカカシの部屋。
必要な物以外置かれていない部屋は広く感じるが生活感がないようにも見える。
「さて、どうしたの?」
ソファに座ったカカシの膝の上に乗せられた恰好で再び尋ねられた。
「カカシ、好き」
「俺も好きだよ」
「愛してる」
「うん。愛してるよ」
滅多に"愛してる"とは言わない俺だけど、今は言いたかった。"好き"だけでは足りないから。
「ぅ…っ」
「ナルト、なにがあったの?」
「里は、俺の自由を奪いたいらしい」
「…まさか、幽閉!?」
「ん」
「いつ、?」
「三日後」
カカシの顔から血の気が引いていくのが分かった。
そんな反応でさえ、俺の事を想ってくれている証拠なのだと、不謹慎にも俺は嬉しくなる。
「ナルトは、それ受け入れるの?」
「…カカシに逢えないなら、死んだ方がマシだ。だからカカシ…俺を殺し」
「なら、俺と逃げない?」
「カカシ!?」
カカシに逢えなくなるのなら、俺の生きていく意味はもうない。
カカシに殺してくれないか?と言う筈だったのに、カカシの言葉に遮られた。
しかも唐突に告げられたのは里抜けを示唆(シサ)する言葉。
瞬きを繰り返し、カカシの言葉を反芻していると、再びカカシが口を開いた。
「ナルトが居なくなったらさ、俺一人になるじゃない?そりゃ、忍びなんだから殉職は常に付き纏うからいつ一人になるか分からないけど。この場合は違うし。ナルトは自ら進んで俺から離れる道を選ぶんでしょ?俺オカシくなって、きっとナルトを憎むよ」
「!?」
「で、当て付けに結婚してやる」
「!!??」
「ナルト以外の人間をこの腕に抱くよ?」
「ぃやだ!!」
「じゃあさ、幽閉される前に、死を選ぶ前に…俺を殺す?」
「こ、殺せるわけない、だろ」
「じゃあ一緒に逃げてよ」
「…カカシ、それ、ある意味脅迫だよ」
「うん。脅迫だよ…だから、ムリヤリに攫ってく」
カカシの言葉が嬉しくて、涙が溢れそうになる。
泣き顔を見られたくなくて慌てて俯いた。
そして、
「バカ、逆だよ。俺が、奪ってくんだ」
精一杯の虚勢を張った。
「ナルトに奪われるなら、本望だね」
「里を出たら、カカシは俺だけのモノだからな」
「なら、ナルトは俺だけのモノだねv」
「言ってろ///」
今更ながらに自分が言った言葉に恥ずかしさが込み上げてきた。
泣き顔と真っ赤に染まった顔。どちらも見られたくないから、収まるまでカカシの胸にへばり付いて離れないでいた。
「行こうか。ナルト」
「あぁ」
そうして、深夜。
互いにリュック一つという身軽さで、里の端に位置する森で落ち合った。
「影分身置いといたから、少しは時間稼ぎができるだろ」
「俺も今夜の任務、影分身に行かせたからすぐにはバレないでしょ」
そう言い終えて、互いに目配せし合った。
チャクラを練って地面を蹴る。
途端に遠ざかる森と里。
二度と戻る事のない所だが、未練はない。
だって…。
「ナルト、どっち行く?」
「暖かい南の島でノンビリするか?」
「賛成〜v」
大切なモノは、すぐ隣に在る。
それだけで十分だろ?
end....
H22.10.22
あんけ〜とのカカスレナルの欄にコメント頂いた
"互いしか必要としない"
二人を書いてみました。
違いしか必要としない
↓
里なんかどうでもいい
↓
里抜ける
と言う安直な考えの元 作成orz
ご希望に添えてるか甚だ心配ですが、私ごときの頭ではこれが限界です(ノΔ〒)
気に入ってもらえれば幸いですm(__)m