アンケ小説
□怒らせないで!
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「じ〜いちゃんvV」
「っっ|||;!!??」
深夜、音も気配もなく就寝していた三代目の寝室に忍び込んだナルト。
表の仮面の変わりに狐の暗部面を被り、派手なオレンジ色のジャージの変わりに暗部服を纏い、ご機嫌だと言わんばかりに満面の笑みを浮かべている。
一方、突然就寝中に忍び寄られた火影は驚き戦き、バクバクと早鐘を打つ心臓に手を当て真っ青になっている。
まあ当然と言えば当然だろう。
「な、なんじゃ!?どうしたのじゃ!?」
「じいちゃんにお願いがあるんだvV」
「お願い?」
「俺とカカシに24日の朝から、26日の昼まで休みくれ!」
ナルトのお願いとは、二日と半日の休暇申請の申し出だった。
しかも恋人であるカカシの分まで。
「お主も知っておろう…イベントや祭時は任務依頼が殺到する事を…お主だけならまだしも、カカシまでは」
「グダグダ言ってねぇで許可しろや」
「ひぃっ|||;」
諭そうと語っていた三代目はどす黒い殺気を諸に受けた。
ナルトのキラキラと輝く微笑みが尚一層恐ろしさを増す。
「じゃあ頼んだからなvV」
「……………|||;」
頼み、と言うより脅しである。
ナルトは火影が反論しない(できない)のをいい事に、勝手に許可が下りたと決定付け、瞬身の術で姿を消したのだった。
「さて、休みはゲットしたし!後はカカシ先生を誘うだけだ///!!!」
火影に凄んだ殺気は何処へやら…ナルトは浮足立った足取りで民家の屋根を飛び移っていく。
浮かれたナルトの背後に、朝を告げる為空が白み始めていた。
「おっはよーサクラちゃん!サッスケ〜!」
「…おはよう」
「…はよ」
いやにテンションの高いナルトを訝(イブカ)しむが、二人は余計な事は口にしない。
「カカシ先生まだかなぁvV」
『やっぱりこの異様にテンションの高い要因はカカシ先生絡みね;;』
『関わりたくねー;;』
常にない程浮かれはしゃぐナルトから少し距離を取る二人。
「…まだかなぁ」
「「…;;」」
30分…1時間と時間が経つ毎にナルトのテンションが下がり、煌めいていた瞳は細められていく。
そんなナルトに二人は冷汗が流れ、何十にも封印を施した金庫に封じ忘れ去ろうとした忌まわしい過去の出来事が嫌でも蘇る。
それと共にけたたましい警鐘が鳴り出し、この場から逃げろと訴える。
「遅い!!」
ドカッ!!!と言う音と共にガラガラと石垣が崩れる。
「な、ナルト!落ち、落ち着いて|||;」
「ま、まだ1時間だろ|||;」
「むっ!」
「「ひぃ|||;!!!」」
火影に向けた程ではなかったものの、鋭い殺気が放たれた。
怯えた二人は互いの手を取り合い、これ以上ナルトの逆鱗に触れぬよう口を閉ざした。
これ程までに二人が怯えるには訳がある。
忌まわしき過去と称した出来事が原因だ。
あれは丁度半年前、梅雨のジメジメした日が続いていた。
任務もなく、偶然商店街に買い物に来たナルト、サスケ、サクラ。
折角会ったのだからとサクラに強引に引き攣られ、甘栗甘に連れてこられた。
仕方なく席につき、浮かれるサクラは抹茶パフェ、甘い物が苦手なサスケはそれ程甘くない長芋の磯部焼きを、ナルトは好物のおしるこを注文した。
甘い物を美味しそうに頬張る二人に対し、見ているだけで胸やけしてくるとばかりにサスケは殊更渋い緑茶を頼んだ。
食べ終わり、二人も温かな緑茶を啜る頃、来店者が来た。
ふと目をやればそれはカカシで、サスケ同様甘い物が苦手なカカシにしては珍しい、と三人が不思議に思っていると、カカシの後ろについて歩くなんともたおやかな女性が見えた。
二人は向かい合わせに座り、親密そうな雰囲気を醸し出している。
パリンッ
サスケとサクラの近くでなにかが割れる音が響く。
見ればナルトの手の中で湯呑みが見るも無惨に粉々に砕かれている。
「ナルト;;??」
「おい;;??」
眼光鋭くカカシの前に座る女性を睨むナルト。
この時始めてナルトがカカシに恋心を抱いている事を知った二人。
なんと慰めの言葉をかけてあげれば…と逡巡していると、ナルトの右手にはいつの間にか発動させたのか、螺旋丸があった。
「ちょ、え!!??」
「止めっ」
止める間もなく、殺気を漲らせたナルトが螺旋丸を放つ。
店の半分が吹き飛び、悲鳴が轟く。
「敵襲か!?」
奥に座っていたカカシと女性には被害は及ばなかったが、突然壊れた店にびっくりしたようだが、瓦礫の下敷きになっていた部下に気が付くと慌てたように救出する。
「大丈夫か!?」
「先生…」
「ナルト?どこか痛いのか?」
「んぅん…平気」
「そうか、良かった」
カカシがほっと溜め息を漏らし、安堵する。
「カカシせんせぇ…」
「ん?どうした//」
急に潤み始めたナルトの瞳にカカシは釘付けになる。
普段の元気一杯なナルトとは違い、小刻みに震える細く小さな身体がなんとも庇護欲をそそる。
「俺…恐かったぁ」
「あぁ、心配ない。今はもう怪しい気配はないから」
震える手でカカシのベストを握り締めるナルトにもう大丈夫だよ、とその背を抱(イダ)く。
『…ちょ、ナルト!?アンタその変わり身はナニ!!??』
『恐いもナニも!コレをやったのはお前だろ―――!!』
倒れ伏す二人は胸中で叫ぶ。
「せんせぇ」
「よしよし」
「「………|||;」」
なかなか震えの止まらない、なんとも可愛らしい反応を示すナルトをその胸に抱くカカシからはナルトの表情が見えていない。
『私はアンタが恐いわ!!!』
『お前ってそんな性格だったか!!??』
ガタガタと震えるサスケとサクラ、その他の者が目にしたのは…してやったり、といったナルトの空恐ろしい微笑み。
これ以降、カカシを落とすまでナルトはありとあらゆる手を使った。
それは周りを巻き込み、いつしかカカシ以外の忍び&里人は知った。
ナルトが実は物凄く腹黒い事を…。
そしてその事に、あの鋭いカカシだけが何故か気付く事はなかった。
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