赤い小さな状袋
□不如帰
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私を見捨てないで!
母と父の姿が見える。
叫んだけれど、声が出ない。声は届かない。
手を伸ばそうとしても、手が届かない。
悲しみと絶望
…凪
誰?
自分の手を誰かが握ってくれた。父よりも少し小さい、母よりも大きい手。
この手を私は知っているわ。
だから、これは夢…
凪は目を覚ました。
大きな瞳から涙が出ていた。頬を伝って、枕を濡らしていた。
「泣いてたけど、悪い夢を見たの?」
恭弥が顔を覗き込んだ。その恭弥が凪の手を握っていた。
凪は黙って頷いた。
「恭弥さん、私を一人にしないで。」
凪は恭弥の手に涙で濡れた頬をよせた。
「一人にしたら、恨むわ。」
凪は目を閉じた。
「じゃあ、僕を一人にしたら、殺すよ。君が僕のものにならないのなら、いっその事、君を殺してしまおう。誰のものにもならないように。」
だから、僕も一人にしないで…
恭弥は微笑んだ。
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