赤い小さな状袋

□不如帰
1ページ/1ページ

私を見捨てないで!

母と父の姿が見える。

叫んだけれど、声が出ない。声は届かない。

手を伸ばそうとしても、手が届かない。

悲しみと絶望

…凪

誰?

自分の手を誰かが握ってくれた。父よりも少し小さい、母よりも大きい手。

この手を私は知っているわ。

だから、これは夢…

凪は目を覚ました。

大きな瞳から涙が出ていた。頬を伝って、枕を濡らしていた。

「泣いてたけど、悪い夢を見たの?」

恭弥が顔を覗き込んだ。その恭弥が凪の手を握っていた。

凪は黙って頷いた。

「恭弥さん、私を一人にしないで。」

凪は恭弥の手に涙で濡れた頬をよせた。

「一人にしたら、恨むわ。」

凪は目を閉じた。

「じゃあ、僕を一人にしたら、殺すよ。君が僕のものにならないのなら、いっその事、君を殺してしまおう。誰のものにもならないように。」

だから、僕も一人にしないで…

恭弥は微笑んだ。


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ