君は100まで僕は99まで2

□蜜月
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恭弥は手際よく骸の着物の帯を結んだ。

2人の沈黙の中で聞こえる布擦れの音は、空気に緊張感を与える。そして、ただの布だったものが、彼の手に掛かると形になっていく。

毎年、恭弥は骸に着付けをさせられていた。来年は一人で着付けが出来るよう恭弥は言うのだが、骸は恭弥の手の動きが美しいからと、憶えようとしない。

「出来た。」

恭弥が短く言うと、骸は微笑んだ。

骸は昼に切ってきたススキを飾った。月の下に置くと穂が銀色に輝いて見える。

恭弥と骸とクロームが一緒に暮らすようになってから、この夜の月を愛でてきた。骸が月が好きだと言った日からずっと。

ススキを飾った祭壇の前に2人は寄り添って座った。

何を話すでもなく、ただ2人は黙っていた。明るい月は着物姿の2人を照らし、月を愛でる為に明かりを消された部屋は、夜の闇よりも暗かった。

不意に骸が恭弥の足を膝枕にして横になった。苦笑した恭弥に、骸は微笑みかえした。

恭弥は横になった骸の髪をゆっくりと撫でた。濡れた黒羽の髪の、その感触を愛でるように撫でていた。その下で骸は目を閉じていた。恭弥の愛情を受け、満足げに息を漏らした。

月の光に照らされ、青白くうつる細い指で、骸は髪を撫でている恭弥の手を止めた。そして、2人は一言、二言、言葉を交わすと、静かな笑いの後、再び沈黙した。

世界にあるのは、月の光と虫の声。そして、2人の男だけだった。



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