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□バクテン(四)
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四。
久しぶりのお布団でぐっすり寝て、起きた。
夢はまだ覚めてなかった。
やることもないので城の中を散策することにする。
とりあえず屋根の上に登るのは忍的には基本でしょ?
城のてっぺんまで来ると気持ちのいい風が頬を撫でた。
「なかなかいい眺めだねぇ」
屋根の縁に立って遠くまで眺めてみる。
城下町から遠くの山まで、見渡しても、くのいちの知っている風景は見つけられなかった。
長い夢だなぁ。
随分ぐっすり眠っているようだ。
…幸村様…早く起こしてくれればいいのに。
別に会いたいって訳じゃないけど。あの暑苦しいの1日1回は見ないとヘンな感じとゆーか…調子狂うんだよねー。
「早く覚めないかなぁ」
「何が?」
「!」
誰もいないはずの場所から声がした。
当然あの忍。猿飛佐助だ。
くそっ、気配なんて消しちゃって。
「お早いんだねぃ」
くるりと身を翻しながら笑顔を向けてやった。
向こうもにやにやと笑っていたけど、目は全然笑えてない。
こーゆう忍は信用ならないな。あーやだやだ。同族嫌悪ってやつだよこれ。
「そっちこそね。何してんの、こんなとこで」
「別にぃ〜」
「ま、別にいいけどね」
忍は興味なさそうに目を逸らした。目線の先を鳥が飛んでいく。
「い〜のぉ?あんたの大事な旦那を殺す作戦でも立ててるのかもよん」
「あのさぁ、」
深いため息の後、目線がくのいちに戻される。
「アンタがここに留まるの賛成したの何でかわかってる?」
「アタシが可愛すぎるからかしらん」
「ジョーダン」
うわっ、鼻で笑いやがった。むか。
「アンタなんていつでも消せるからね」
ぎらりとした目で射るように見つめられる。
別に、ビビったりしないけどさ。そんなことだろうと思ったし。
くのいちから武器を取り上げないのも、まぁそれだけ自信があるってことなんだろう。
そんなことを考えて肩をすくめて笑った。
「足下すくわれないようにねん」
「…ご心配どうも。ま、精々のんびりしていけば?」
それだけ言うと忍は屋根の上からひらりと消えた。
「随分な歓迎だわ」
挑発とも受け取れる言葉だったが、生憎、くのいちにはここの主に楯突く理由もやる気もない。
ご期待に添えず申し訳ないが、夢が終わるまでのんびりすごすだけなのだ。
「ん?何これ」
くのいちの足元に紙切れが落ちている。
拾い上げると地図と短い言葉が綴られていた。
『朝ご飯はここです。残さず食べるように』
……忍の仕業だろうか。他にいないけど。
「…ヘンな忍ぃ…」
くのいちの頭上を飛んでいた鳥がどこかへ飛び去った。本日も、晴天なり。
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