名前変換など
□バクテン(壱)
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壱。
ころころ。
ぽとり。
ずべっ。
「いだっ」
後頭部への激しい痛みでくのいちは目を覚ました。
幸村様の稽古風景を、木の上で眺めていたはずだが、いつのまにか眠っていたらしい。
目を開くと先程まで寝そべっていた枝が見えた。かなり高いところから落ちたようだ。
「うう…猿でもないのに木から落ちるなんて、忍的に恥ずかしすぎるぅ。」
ひっくり返ったままひとしきり嘆いて、のそのそと起き上がる。
「…はにゃ?」
まず、そこで見た風景に首を傾げた。
何やら、昼寝をする前と風景が変わっているような気がする。ここの林はこんなに緑が深かっただろうか。
何より鍛錬をしていたはずの幸村様がいない。
もしかして、先に帰ってしまったのだろうか。いつもなら、くのいちが昼寝していようと帰り際には声をかけていくのに。
「幸村様ったら、ひっどーい!」
頬を膨らませて、今は姿の見えない主に抗議する。
まだその辺にいるだろうか。
ごそごそと草木を分けて姿を探してみる。
ううん。やっぱりこんなに木は生えてなかったような。
「幸村様〜!」
声に出して呼んでみる。これで駄目なら帰ろう。
「ゆきむらさまぁ〜!」
「なんでござるか?」
ん?ゴザル?
茂みをさらにかき分けると、赤い甲冑を纏った青年が地面にしゃがみ込んでいた。
何か変なのいた。
「何してんの、アンタ」
「某、どんぐりを拾っているのでござる」
どんぐり?
結構いい年してるけど、ご飯に困ったりしてるのだろうか。
「あっそ、頑張ってねぃ」
彼の食生活に興味はない。
赤い青年に手を振って幸村様探しを再開する。
「ゆきむらさま〜どこ〜?」
「ここでござるぅ〜」
また赤いのが答えた。
「アンタを呼んでるんじゃないのよ」
手を挙げて主張してくる赤いのの鼻先に、びしりと指を突きつける。
「アタシが探してるのは真田幸村様!アンタただでさえ赤くて紛らわしいから黙っててくんない?」
「某でござる」
「にゃ?」
赤いのは動じもせずに、きょとんとした顔のまま言った。
「真田幸村は、某の事でござるよ」
「にゃにゃにゃにい〜〜?!」