長編novel

□君の好きなようにして・4  
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「ふぁぁ〜あぁ」

カガリは大きな欠伸をした
昨夜、カガリはシンに抱かれた
終業式の日に肌を重ねて以来これで2度目の逢瀬だった

「次はこのキスマークが消えるまでにはしたいな」

その言葉通りシンはカガリを求めてきた
まだ行為に痛みの恐怖が残っていたけれど、カガリは求めに応じた
シンの体を突き上げる欲望にただ身を任せた
果てしない欲望・・
シンは一晩に3度カガリを抱いた



(眠い・・いや。眠いというか、痛い)
初体験の時ほどの痛みはないにしろ、幾度も挿入された膣内が擦れてズキズキした
シンとの行為は嫌いではない、挿入時が痛いだけであとはむしろ気持ちがいい
この痛みも慣れてくれば快楽に変わるのかと思うと耐えられるというものだ
でも、シンの尽きることのない性欲に脱帽させられるのも事実だった



カガリは今日、朝からバイトに向かっていた
バイトが終われば、午後から部活
疲れた体に過密なスケジュール。欠伸と溜め息が同時にでそうだった
(死にそう・・・)
カガリはトボトボと歩いた



「おはようございます」

「おはよう、アスハさん。あらあなた元気がないわね!
お客様の前ではもっとシャキっとしなさいよ!シャキっと」

「・・はい」

アルバイト先の制服に着替えながら、朝からの佐々木の小言にカガリはうんざりした
なぜか佐々木とカガリはよく勤務が一緒になる
その度に怒られ、なじられ、シフトを組んだ人物をカガリは呪いたくなった



指定の制服に着替えホールに立てば、お客を案内し注文を聞く
そして料理を運んで、会計。その繰り返し
突然のアクシデントやクレーマーに掴まらなければ難なくこなせるほど
カガリはファミレスのウェイターというアルバイトが板についてきた
そう、突然のアクシデント・・・想定外の客が来なければ



「いらっしゃいませ」

お客の来店を知らせる音にカガリはいち早く反応をし、出迎えようと入り口へと急ぐ

「あ・・・・」

そこには見知った人物が立っていた
数人の者を引き連れて
忘れたくても、忘れられない人物
記憶の引き出しを開けなくとも、鮮明に彼との出来事がカガリの頭の中に浮かんだ
エレベーターでの最悪の出来事

藍色の髪を肩でなびかせて、翡翠色の瞳を持つ男

いつ、どんな状況で見ても彼の顔は美しく整っていた

仕事帰りなのか着崩しぎみに、ストライプの細身スーツを身に纏っている
少し派手目なスーツと風貌が彼とその一帯にいる人物の職業を物語っていた
カガリも彼がホストという職業に就いていることを再認識した



彼、アスランもカガリの顔を見てすぐに気が付いたようだった
驚きに目を見開くと、狡猾な笑みを浮かべた

「久しぶり。ナルシスト軍団の一員アスランだけど憶えてる?」

アスランの横で茶髪の男がプッと吹き出す

「ナルシスト軍団って何?」




「あ・・・う・・・」

カガリがそう言葉にしたのは事実だが、本人達を目の前に「ナルシスト軍団」と言われると焦り、言葉が詰まった

「知り合い?」と茶髪の男

「一応。エレベーターの中でね」




「ろっ・・・6名様ご案内します!」

二人の会話を遮り、カガリが何も聞かずに
アスランたちを喫煙席へ案内しようとすると

「え〜僕。禁煙席がいいなー。だってその方が女の子率高いんだもん」

茶髪の男が不満をこぼした
(しまった!喫煙席か禁煙席か聞くの忘れた)

「すっすみません!・・ではこちらにご案内します」

カガリは慌てて向きを変えた拍子に足をひねり、何もない床でけつまずいてしまった

バサ、バサ、バサ

手元から落ちるメニューたち
(あわわわわぁぁ)
カガリは急いでメニューを広い集めた



「アスラン、大丈夫この子」

「さあ・・・」

二人は冷ややかな目で見下ろしていた



やっとのことで、窓際の禁煙席に案内すると

「メニューがお決まりになりましたら、あちらのボタンを押してください」

決められた接客用語を言い、逃げるように席を離れた




そんなカガリの接客態度をあの人が許すはずがなかった

「ア・ス・ハ・さん」
(ひぃーーーー)
カガリは心の中で叫んだ

「何ですか!あの接客態度は!タバコを吸われるかどうかも聞かないし、
挙句の果てにはお客様の目の前で転んで、メニューを落とす始末!!
あー私はこの数週間あなたに何を教えてきたのかしら!
もう!あきれて物も言えないわ」

(充分言ってるよ!そりゃ、聞かなかった私が悪いけど・・・
なんだよ!女の子率が高いからって。
そんな奴ら喫煙席で充分なんだよ!第一ホストのくせに落としたメニューの1つも拾ってくれないなんて!
あいつら金貰わなきゃ動かないのかよ。あーむかつく、むかつく!)

でも、そんな奴らに動揺してしまった自分自身にもっと腹が立った

「次からはきちんと接客しなさいよ、わかった?」

「はい」

心とは裏腹にカガリは従順な返事をした
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