長編novel

□君の好きなようにして・5  
1ページ/19ページ


むさくるしい男だけの教室
全校あげての球技大会にやる気と倦怠が入り混じっていた
シンは前者の方である

2クラス分の男子がひしめき合う窮屈な教室で
シンは学校指定の体操着に着替えると
自分の左手首を撫でた

そこには真新しい腕時計がはめられていた



夏休みも終わりに近づいた頃

「誕生日にはまだ早いけど、コレ・・・シン誕生日おめでとう!」

アルバイトで貯めたお金で買った腕時計
シンの喜ぶ顔が見たくて、カガリは買ったその足でプレゼントを渡しに来た
シンは嬉しさのあまりプレゼントを受け取るより先に
カガリに飛び付き抱き締めた

「ありがとうっ!カガリ・・俺、めっちゃうれしい!!」

「わわっっ!!いや、まだ渡してないし!っていうか・・・
恥ずかしいから離れてくれ〜〜〜!!」

ここはシンのマンション近くにある人通りの多いコンビニ前
行き交う人々が若者の熱い抱擁を冷やかし混じりの目で見てきた
こんな場所で渡す方も渡す方だが
人目も気にせず抱き締める方もいかがなものかと
カガリは抱き締めた腕を緩めようとしないシンの肩に顔を埋めて
他人の目線から必死に顔を隠そうとした

嬉しいけど、恥ずかしい
人前でいちゃつくなんて柄じゃない
でもやっぱり嬉しい
カガリは俯きながらも、シンの背中にそっと手を回した



カガリの選んだ腕時計をシンはいたく気に入った
カガリが選んだからというわけではなく
耐衝撃性、ソーラー電池、電波受信時計、デザイン
すべてがシンのスタイルに合っていた




「よっしゃぁ!!今日は優勝目指して頑張りますか!!」

突然大声を張り上げて気合を入れたシンに
周りの男子が何事かと振り向いた

「気合はいってますね〜。さては彼女のカガリちゃんに
イイトコ見せようって魂胆ですか?」

ニヤニヤ下衆な笑みを浮かべてヨウランが肩を組んできた

「うっせー」

シンはヨウランの頭をはたき、締め技をかけた
(当たり前だろ!球技大会で好きな女にイイトコ見せなくてどうすんだよ。
カガリに格好良いトコ見せて、惚れ直させてやる)
そしてあわよくば、今夜カガリと・・・
少しの下心と邪(よこしま)な動機でシンの瞳は闘争心に燃えた



「シン・・ギブ・・うぅっ・・ギブ!ギブギブ〜〜!!」

シンの締め技に白旗を揚げたヨウランの悲鳴が、廊下まで響いた
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ