その他

□その子は誰の子〇〇の子
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「御館様!!」

「えぇい。信長様はいずこに…!」



……?殿様いないのかな?

「折角この子のこと聞こうかと思ったのにな」


あれから毛布から救い出した男の子は相変わらずかさねの腕の中にいた。四歳位の子供だと重い筈なのに、彼女はいとも簡単に抱き抱えている。
誰かに聞こうとしても、この慌ただしい中聞けるわけがない。


「全く肝心なときに見えなくなってさ…」

「俺はここだ」

「ん?」

「いい加減離せバカ女」

いきなり喋りだす男の子。立ち止まってよくよく見てみると、この子は


「俺は降りる。…だが、アイツの折角の楽しみだろうからな、お前にくれてやる」

「えっと………ま、?!…ののの、」


意味不明な言葉を口走る信長。だが、かさねの耳には届いていない。ただ驚くばかりで、次に出す言葉が出ていない。
その小さな手で、女の口にあめ玉のようなものを放りこむ。
ごきゅん、と喉苦しい音がなると一瞬のうちに辺りは白い煙が漂っていた。


(……戻ったか、波瀬のやつめ、井戸行きだな)


井戸とは信長公の屋敷にある井戸穴のこと。どうやら彼が小さくなったのは、彼が原因らしい。バラバラに散らばっていた武服をかき集め、着直す。


「さて…」


このままこの部屋にいるのも面白いだろうが、これ以上騒がしくなるのは嫌いだ。信長は袖を直して戸を開けた。


「…今度は俺があいつの楽しみを買ってやる。」



何やら不作を考えてらっしゃるようで。信長公の顔つきはいつにまして怖くなっていた。

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