物語

□一日目
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朝。事件は唐突に起こった。

・・・眩しい。今日は90%が晴れ10%が曇り・・・あいたっ。っっ・・・今のは地震?
地震の確率・・・えと、あれ、れ、0%?では一体・・・

ちらりと横を見ると、壁にかかった鏡に自分が映った。

「え、えええええええええ?!」

始まりは突然に。

ドタドタ。
響く足音。

この時間、母さんやレン、父さんはまだ起きていないはず。じゃあ、兄さんかな。

セトは眠気眼で、隣のベッドに寝るクロウをちらりと見た。

・・・まだ寝ている。
じゃあ、一体。
セトは側にある虫とり網をてにとった。
ベッドから降り、身構える。

「セト!!」
「わぁぁぁ?!」

「セト!!!」
「兄さんも?!」

声はあろうことか後ろから聞こえて来た。
それに続き、ドアが勢いよく開いた。あまりの唐突な出来事に、持っていた木の枝を手から落とした。
後ろでは、クロウが『TALLYHO!!』と叫んでいた。
目の前には長いピンク色の髪を垂れ流したかわいらしい少女が立っていた。
「ええと・・・」
「セトが私を分かる確率は、確率は・・・」
「もしかして・・・PF?」
「ひゃ100%!よかった・・・」
PFは嬉しさのあまりセトに抱き着いた。
「わ、わわ・・・でも、どうして」
「わかりません。朝起きたら急に」
「じゃあ、クロウも」
二人はクロウの方を向く、クロウは相変わらずTALLYHOと叫んでいた。
「よく分かんないよ」
「む。どうした、セト・・・ん、んん?」
「ど、どうしたの?クロウ」
クロウはむくりと起き上がり、頭をばりばりと掻いた。
そして
ぐぅぅぅ・・・
沈黙。
顔を染めた、PF。それを見て
「腹減った〜」
と、クロウが呟いた。




「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」

「うめぇ、うめぇ!」
「ほんと、美味しいです」

どんな胃袋をしているんだろう。
現在、おかわり四杯目。クロウはいいとして、PFは駄目だろう。体型的に。
「そ、そろそろ食べ終えたら?」
茶碗にご飯を盛っていたサイが不意に言った。
炊飯器の中のご飯は既に空に近かった。
「あ、す、すみません。あまりに嬉しくてつい・・・」
顔を赤らめながら、PFは茶碗を置いた。
「俺はまだまだいけるぜ?」
「そういう問題じゃなくてだな」
クロウの言葉に、すかさずシンが突っ込みを入れる。
「我が家の米を食い尽くすきか?」
「おぉ、挑戦状か?いいぜ、やってやるよTALLYHO!!」
「違う!!」
「そんなカリカリすんなよ」
限界。シンの脳が沸点に達した。
「いでよ!グラスケイジッ「えい」
爽やかに笑いながら、サイがシンに手刀を入れた。







「きりーつ、礼ありがとうございました」







「楽しかったな!」
「もークロウは暴れすぎ」
初めての学校で余程興奮したのか、クロウはあちこちで暴れまくり、たった一日でその名を学校中に広めてしまった。
「兄・ち・ゃ・ん・だろ?」
そう言って、ぷんすかと膨らますセトの頬をクロウは思い切り引っ張った。
「ひひゃい。ひひゃいひょ」
「じゃあ兄ちゃんって言ってみろ」
「クスクス」
二人のやり取りを見て、レンが微笑んだ。
それを見て、釣られて二人も笑い出した。
夕焼け空の下、三人の笑い声が響いた。

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