東方 小説

□HAPPY BIRTHDAY
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「まだ本を読んでいるのかしら?」
「・・・レミィ」
呆れたものね。レミリア・スカーレットはため息をついた。
「・・・」
「いい加減にしなさい!」
レミリアは本を読むパチェリーの机をバンと勢いよく叩いた。
「・・・」
レミリアの行動に、一瞬どきりとしたが、パチュリーは再び本に目を落とした。

沈黙が流れる。

「はぁ、」
付き合ってられないわ。と、レミリアが図書館から出ていこうとした。

「ねぇ、レミィ」

無言で、振り返る。
パチュリーもレミリアは見ず、本を見つめたままだった。
「怖いって・・・おかしいことかしら?」
レミリアはため息をつくと、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「別に。当たり前の感情じゃない?」
怖い−−−いつか、魔理沙が自分のもとからいなくなってしまう。だったら・・・・

「歳を祝う誕生日なんて、祝いたくない」

祝うごとに、魔理沙が消えていく、薄れていく。

「−−−数年前の事よ」
不意に、レミリアが語り出した。


数年前の事、一人の少女が歳をとった。しかし、少女を祝う者は誰ひとりいなかった。別に少女が嫌いなわけではない。皆、嫌だったのだ。

−−−【歳をとる】という事が。

彼女が薄れていくようで、嫌だった。
「お嬢様」
紅茶が冷めて、美味しくない。しかし、幼い主人はカップに口を付ける。
「入れ直しましょうか?」
そう言い終わる前に、主人は紅茶を飲み干した。
「−−−ねぇ、咲夜私が嫌いになった?」 「何故ですか?私はお嬢様が大好きですわ」
「誕生日を祝わなかったのに?」
ぴたり。紅茶を入れる、咲夜の手が止まった。
「・・・それでも、大好きですわ」
紅茶の音が響く。
「歳をとるって嫌な事ね」
そんな考えしか出来ない自分も嫌だった。
少女は静かに笑うと、こう切り出した。
「実を言うと、祝わなかったのは少しショックでした」
「・・・」
「【誕生日】って、歳を祝うだけだと思われがちですが、実際は違うんですよ?誕生日とは−−−−」


【                                】


その言葉は私の耳にやけに残った。


「意外ね」
「えぇ。意外。でも咲夜らしい答えだわ」
二人は笑う。楽しそうに。
「あら、どこに行くのかしら?」
不意に立ち上がったパチュリーにレミリアはわざとらしく尋ねた。まるで、答えなど既に知っているかのように。
扉へと手をかけると、振り返り言った。
「誕生日会に行くのよ。」
「パチェ」
「何?」
「今の話、咲夜には内緒よ?」
そう言うと、パチュリーはふっと笑った。
「分かってるわ」


バタン。
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