君の花が
□プロローグ
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無限に広がる緑、そこに佇む男と少女は静かに風に耳を傾けていた。
この世界を守りたい。と、
「団長、副団長殿!」
不意に聞こえた青年の声に、二人は振り返った。
「どうした?」
青年の顔は蒼白で、悪魔でも見たような顔だった。
「し、下町に火が!!奴ら仕掛けてきました!」
青年が言い終わるのとほぼ同時に、少女は駆け出した。
「待て!ノアール!!」
咄嗟に男がノアールの腕を掴むが、強く腕を振られ離してしまった。
ノアールはそのまま進み、町の見える位置まで来ると、「アル!」と叫んだ。
「は、はい!副団長殿」
「一番激しいのは!?」
「は!ラディオン通りです!」
そうか。と短い返事を返すとノアールは再び進み出した。
「ノアール、何を考えている!死ぬ気か!?」
「団長、私は騎士だ。村が襲われたら助けに行く。それだけだ」
「任務を放棄する気か?」
「目の前の人間が助けを求めているんだ。なら、私は命に代えても彼等を守ろう」
ノアールは腰から剣を抜くとそれを翳した。
強い言葉に含まれた揺るぎない決意。しかし、剣を持たない手は小さく震えていた。
−−−・・・全く、このお姫様は。
男は溜息をつくと、腰から剣を抜き、同じ様に翳した。
そして、剣を強く交えた。
キィィンと、鋭い音が空に響く。
「・・・フッ。−−−ノアール・フランディオ。貴公に新な命を下す!下町を守れ。そして、必ず生きて帰ってこい」
男の微笑みと言葉に、ほんの少し口元が緩んだ。
「−−−は。この剣に誓って!」
馬に跨がると、手綱を強く振り下ろした。
馬の前足が高く上がり、それを合図に走り出す。
向かい風は、ノアールの行く手を阻むように強くなり、切り裂くような風が吹き荒れ、衝撃が体を伝う。
「−−−っ」
−−−団長
皆を救い、必ず、生きて帰ってみせます。
「やぁっ!!」
強く、強く、手綱を振り下ろした。