□『天然娘』
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1931年 シカゴユニオン駅

「・・・・」
「・・・何ですかその目は。大丈夫ですよ、ちゃんと乗りますよ・・・」
「・・・・」
「に、睨まないで下さい!」
そう叫ぶと、少女は逃げるように列車へと向かって行った。

「・・・何事もなければいいけれど」

残された一人の女は、ぽつりと呟いた。

(いなくなったかな・・・?)
少女は先程までずっと一緒にいた女を探した。一度振り返り、いないことを確認してから、近くにいた男に駆け寄った。
「あの、何等客室ですか?」
いきなりの質問に男は戸惑ったが、少女の真剣な眼差しに負け、仕方なく男は答えた。
「二等客室だが・・・」
「あのっ・・・私一等客室なんですが、切符交換しませんか?」
「・・・は?」



「あ、ありがとうございます!」
「いや、でも珍しいな。一等客室が嫌だなんて」
「そんな大きい部屋私には必要ありませんから」
「そうか。・・・もし車掌に何か言われたら、兄は風邪をこじらせて乗れなくなったとでも言っておけ」
「でも、貴方は・・・」
「なぁに、俺の方は何とかするさ」
何度もお辞儀を繰り返した後、少女は顔を上げてにっこりと微笑んだ。
「それでは失礼します。また列車内で!」
「あぁ、またな」
男は少女が列車に入るまで見守り続けた。
(あ、車掌にぶつかった・・・)
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