物語

□雨の日には傘を差して
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「あ、あのさ・・・エニス」
「はい。なんでしょうフィーロ」
「かかかか買い物に行こう」

雨の日には傘を差して

「雨だ」
店に入ろうとした途端、空を雲が覆い、あっという間に雨が降り出した。
「しばらくデパートから出られないな」
「そうですね」


「買うものはこれでよしっと・・・ん?」
不意にフィーロは少し遠くで何かを見つめるエニスに気がついた。
「何見てるんだ?」
「いえ、これを・・・」
エニスが見ていたもの、それは小さな小物入れだった。
かわいらしいピンク色の小物入れ。
「ミリアさんにどうかと」
あぁそういえばアイザックがミリアの誕生日がもうすぐだとか言ってたな。
値段は少し張るけど大丈夫だな。
「よし、じゃあそれを買うか」
「はい」
雨もちょうど小降りになってきた。
−−−のだが
「なんでまた降るんだよ!!」
豪雨。とはいかないものの、それに近い量だった。
「通り雨でしょうか」
「多分」
待てば止むだろう。
「けど、これ以上マイザーさん達を待たせるとなぁ。・・・仕方ない、傘買うか。まぁ一本で何とかなるだろう」
・・・ん?まてよ
そういえば、この前アイザックとミリアが一つの傘で帰ってきたな
それはつまり、エニスと二人で一本で−−−−・・・
「ああああああ!!」
「どうしました、フィーロ!?」
「い・・・いや、ミリアにどう渡そうかなって」
「そうですね・・・」
フィーロにそう言われ、エニスは考え始めた。

早く雨が止んでほしい

なんとかごまかせたものの、実際フィーロの顔はとてつもなく紅かった。
傘、二人で傘・・・
そしてフィーロは一つの言葉にたどり着く。

−−−相合い傘

「だああああ!!」
だからなんでそっちに行く!?
「フィーロ!?」
二本やっぱり二本にしよう!
「エニ・・・」
振り向くと、エニスの腕には傘が一本・・・
「すみませんフィーロ。傘が一本しかなくて・・・フィーロ?」
目の前には今にも粉と化して消えそうなフィーロ。
「い、いや・・・」
まぁ何だその・・・発想の転換をすればいんだ!これは相合い傘じゃない!これは・・・これはだな・・・
「どうかしましたか?フィーロ」
「い、いや」
フィーロは深く呼吸をすると、拳をギュツと握り言った。
「俺が・・・差すよ」
「は、はい」
エニスがフィーロの手に傘を渡す、瞬間二人の手が触れるが今のフィーロはそんなことでは驚かなかった。
エニスから傘を受け取ると、フィーロはエニスが濡れないように傘を差した。
「フィーロ!?」
エニスが濡れないようにしたため、フィーロは少し傘から出てしまった。
「気にするな。その・・・エニスが濡れると心配になる・・・風邪引かないかとか」
「フィーロ・・・」
「か、帰るぞ」
「はい!」
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