Novel

□クリティマ
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 全くと言って良い程本質を見ていなかったことを恥じる。ティマイオスは強いのだ、思うよりもずっと。彼は何も失くしてなどいない。その大きな存在に守られ支えられていたのはこちらの方。
「…だから今度はこの瞳で平和な世界を見たい、クリティウスたちと一緒に」
微笑んで握られた手を逆に掴み、返答の代わりに引き寄せて強く抱き竦めた。そうでもしなければ、滲む視界を見られてしまうから。
「―――…あーあ、幸せそうな寝顔して……ん?何してんだクリティウス」
「保存作業、だ」
 クリティウスは傍らの鞄に慎重に手を伸ばし、街で購入した色鉛筆の束とスケッチブックを取り出した。今し方浸った感傷を思いながら、懐かしいそれとはまた違う先程の光景を丁寧に構成していく。薄いものを選んだつもりだ、この旅が終わる時に一冊仕上がっていると良いと思う。
「へー…絵心あるじゃんか」
「茶化すな」
 本当にそうだったら、毎度ティマイオスが寝ている最中にこっそり描いたりしない。
 一つ伸びをして、ヘルモスはまた笑った。
「茶化してなんかないさ。…ただ、平和だなーって」
「……あぁ、」
 肩に触れる体温が、暖かい。






焼けを切り取って、
(宝箱に入れてあげるから)(今は安らかに)






(作者コメント/咲兎)
クリ(→)ティマ+ヘルモスです。ティマイオス寝てますが(苦笑)ドーマ編が終わった後は、こんな風にDM界でほのぼのやっていたらいいなという妄想でした。

(作者コメント/あかほしみう)
咲兎さんのクリティマを読んで、ぜひ描かせて頂きたいと思い合作の立候補をしました。素敵な小説の一部分を、少しでも出せていたら嬉しいです><
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