連載小説
□【Act.1】
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「…はぁ…」
ハートの城の庭園。
アリスは紅茶の入ったカップをテーブルに置き、深いため息をついた。
「どうしたアリス。わらわとのお茶会がそんなにつまらぬか」
アリスの向かいに座るハートの女王…ビバルディは少し笑って言った。
笑いながら…ということは今は気分がいいのだろう。幸い、今の時間帯は彼女の好きな夕方だ。
「ごめんなさい。そうじゃないの、ただ「アリスー!」
アリスの発した声をさえぎるように聞こえたのはハートの城の宰相、ペーターの声。
アリスは耳が腐るほど聞き慣れたその声に、耳を塞ぎたくなった。
「ため息の理由はこれかアリス」
「…まぁ…」
「アリス!探しましたよー!お茶をするなら何故僕を呼んでくれないんです?」
「うるさいわね!私はビバルディとお茶してるの!邪魔しないで!」
「そんな…アリスー!」
「ホワイト、お前仕事はどうしたのじゃ。そんなすぐに終わるとは思えんがな…」
「おや、女王陛下いたんですか。気が付きませんでした」
ピッキーンと場の空気が凍りつく。周りにいた使用人達はそそくさと城の中に入っていった。
当事者の二人は睨み合い、火花を散らしたままだ。
そんな二人を見、アリスはまたため息をついた。
慣れたものだ、と思う。
ここは銃弾飛び交うワンダーワールド。
目の前の女王や宰相はもちろん、常識をわきまえていない人だらけだ。
せめて一人でも、ここの住人を非常識と言える人がいたならどれだけ楽だろうか…