小説置き場

□気まぐれ円舞曲-ワルツ-
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それは、部活が終わって部室に戻る途中のことだった。


「ねーねー。」



「………ぇ?」


その人が俺に話しかけていると気付くのに、少し、時間がかかった。それでも気付いただけいいと思う。普段の俺なら絶対気付かないって、断言できる。
別に耳が遠いとか目が悪いとかじゃない。(髪の毛で少し見にくいけど。
普段、俺は気配を消してる。存在がないものに話をするような人は滅多にいないだろう。そのおかげで授業中はあてられることがないけど。

ところで、何故そんな俺が人に話しかけられたと気付けたか。
理由は簡単。その人の目線の先には人が俺一人しかいなかったからだ。


「…もしかして、俺呼んでるの?」


「他に誰がいるの?」


少し首を傾げじっと俺を見つめながらその人は問う。表情はあまり変わっていないせいで、考えてることが分からない。
言葉に詰まって、黙っているとその人はにっこりと笑う。身長差の関係で、若干上目遣いだ。


「ねっ、今日途中まで一緒に帰ろうよ。」


「え、でも家…」


「同じ方向だよ、朝見たもん、当番があったから声かけなかったけど。」


少し、びっくりした。
家が同じ方向っていうのもびっくりしたけど、もっとびっくりしたのは朝見られていたことだ。朝も俺のことが見えてたなんて。もしかして霊感とかある人か?


「いいだろ?一緒に帰る人いないだろー?」

それは少し失礼じゃ…?
そう思ったけど事実なので素直に頷く。
そんなわけで、帰るために少し急いで着替えをした。



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