0×ナイフ
□夜徒として、人間として
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。
何をしてもつまらなかったので、
その人と出会った。
「何読んでるの?」
誰かが後ろから俺に声をかけてきた。
俺は、声をかけられた方を振り向いた。
見知らぬ者と知り、すぐに本の方に目を戻し、一言。
「宮本武蔵の伝記です。」
「それ、面白い?」
「はい…。」
俺は、本を読むのに集中したかったのであまり話さなかった。
その人も、何も言わずに俺の隣に座り、持っていた鞄から菓子とお茶を出し、それを食べ。
キーンコーンカーンコーン♪
あっ、もう、夕方の5時か。
俺は、本にしおりをはさんで閉じ、すっと立ち上がった。
ちらっとその人の方を向いて『すいません。』と一言いって公園を後にした。
「おっそぉ〜いぃ!」
「すみません!夕飯の買い出しに時間がかかってしまって…。」
「言い訳はいいから、早く、ビール!」
・
俺はため息を漏らして缶ビールの
「くぅ〜っ!」
「姉さん、いくら夜徒人とはいっても飲みすぎは身体を壊すよ。」
「いいの!これくらい!…ねぇ、海里、私が夜徒人だからって、無理して私に合わせなくていいのよ…。」
「…そうはいかないよ…。言ったでしょう?“絶対に姉さんを人間に戻す”って…。」
「だからって、私に合わせてたら、海里が身体壊すわよ。それに、せっかく夜徒人になったんだし、まだやりたい事が山ほどあるのよ!そう簡単に戻されたら困るわ!」
そう言って手をヒラヒラ揺らす。