0×ナイフ
□人の形の禍
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空海
俺と唯世が出会ってもうすぐ1年になろうとしていた。
唯世の病状は、悪くなる一方だった。
昔と比べてマシになったとはいえ、まだXP患者は20歳まで生きれないほど短命だ…。
いつかきっと唯世も…。
ダメだ!
そんな事考えんな!
でも、また独りになるくらいなら、いっそ…。
「唯世の奴、どうしたんだ?あいつが俺より遅れて来るなんて…。」
日が落ちてもう3時間…。
唯世はまだ来ない…。
いつもなら紫外線が弱まる夕方にはここに来て俺が来るのを待っていてくれるのに…。
それになんか妙な胸騒ぎがする…。
まさか…。
俺の不安を煽るように救急車のサイレンが耳に入った。
救急車を見て何かを察知した、俺は、その後を追った。
そんな…嫌だよ!
お前まで俺を捨てるってのか!
唯世!
追いかけていた救急車が救急病院に到着した。
救急車からストレッチャーに乗せられる奴の姿を見て膝をついた。
「ウソだ…。唯世…。」
俺の目から自然と涙がこぼれる…。
・
―ズキッ!
「いっ!頭が…。」
俺は、急な頭痛で頭を押さえる。
「なんだよ…。」
思い出した…!
なんで俺が夜徒人になったのか…!
そう…。
あれは、8年前…。
俺は、初等部を卒業して中等部に入ってすぐ…。
「よっと、ん?なんだ?」
俺は、部活に向かう途中、口論を耳にして立ち止まる。
『ここは神の聖域です!あなたたちは神の家を汚すつもりですか!』
『だから、何度も説明したでしょう?ここは区画整備で取り壊しになったんだって。教会は別の場所に移すという話をしたじゃないですか。』
どうやら、この教会の取り壊しについて口論になっているようだった。
『私は、ここを離れるわけにはいかないのです!』
『だから、いい加減に…。』
『話しても埒があかん!強行突破だ!早くしろ!』
そう言ってブルドーザーを走らせそのまま、突っ込み、シスターを潰した。
辺りにメキメキという音とシスターの悲鳴が木霊した。
『なんだよ…あれ…ひでぇ…。』
―ガシッ!
『んっ!ん…うぅん!』
俺は誰かに背後から襲われた。
その手には、ハンカチのような小さな布
俺の口を被い、茂みの奥に連れこまれる。
・
俺は、首を強く絞められながら犯され、そのまま意識が途切れた。
そして、次に目が覚めた時には…。
『うっ…うん?俺、生きてんのか?』
『やっべぇ、サッカー部の練習試合…。』
体を起こして茂みから出て
『…うわぁっ!』
身体が熱い…。
まるで焼けているようだ…!
熱さに耐えられず、茂みに戻って身を屈めた。
俺は、すぐにわかった…。
俺…
夜徒になっちまった…。
−そうだ…
その時から俺は、夜徒人になったんだ…。
でも…一体誰が俺を夜徒人に?
ダメだ。
どんなに記憶を辿ってもそこまでは思い出せねぇ…。