0×ナイフ

□夢と梦
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唯世

「あぁ、寝過ごした!相馬君、待ってくれてるかな?」

ただ今、夜の11時。


「あれ?いない…。」



公園の周りをキョロキョロ見渡すけど、相馬君はどこにもいない。

「う〜っ…。あれ?」

公衆電話ボックスがあるいつものベンチに不自然なポリバケツがある事に気づいた。

僕はそれの蓋を開ける。

「あっ…よぅ!」

相馬君はその中にいた。

僕は、なにくわぬ顔で蓋を閉めた。

「どこにいるんだろう?相馬君…。」

「うお〜ぉいぃっ!」

「あれ?そこにいたんだ?」

「“あれ?そこにいたんだ?”じゃねぇよ!唯世、俺がここにいんの知っててそうしただろうが!」

「アハハ、ごめん…。」



僕と相馬君は、朝食(感覚的にはお夜食)を食べて軽く談笑する。

相馬君と出会うまでの僕はただ夜空を見上げて物思いに耽って夜が明ける前に家に帰るという事が当たり前だった。

しばらく話しているうちに話題が無くなり、沈黙に包まれた。

「ねぇ…相馬君…。」

僕は、ある事を思い出してその沈黙を破った。

「僕ね、今日、不思議な夢を見たんだ…。」

その夢の話をした…。



―オギャア!オギャア!オギャア…!


『生まれたのね!』

『男のお子さんです。』

『男の子!あぁ、よかった。早く、孫に会わせちょうだい!』

『しかし、大変な難産だった為、母子ともに危険な状態なんです。』

『そんな!なんとしてでも二人とも助けなさい!』

それは、僕が生まれた時から始まっていた。

その後、僕とお母様は一命を取りとめたけれど、お母様の産後の経過が思わしくなく、お母様は一生子供が生めない身体になってしまった。

車椅子での生活を余儀なくされたお母様は、お乳も出ないほどのノイローゼに陥り、僕の面倒はお祖母様と奏子さんが見るようになっていた。

―「奏子さん?」

「月詠イクトと歌唄ちゃんのお母さん。僕のお父様の学生時代からの知り合いで、僕の家とは近所だったんだ。」

―それから、何ヶ月経ったある日。

『あぁ!唯世が!唯世が!』

『どうしました!騒々しい!』

『唯世を日光浴させていたら、身体中に水ぶくれが!』

僕はすぐさま、かかりつけの病院に行った。

『XP、A群…?』

『正式な病名は、色素性乾皮症といって常染色体劣性遺伝性の光線過敏性皮膚疾患です』

『それでその病気は治るのですか?』
 

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