お話

□四大神騎〜dual face〜
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プロローグ

 「今日って何の日だっけ?」
何もない荒野で、年齢にそぐわない体躯を持つ少女(?)は隣にいる、背が高く、冷徹そうな目を持つ幼なじみに聞いた。
「建国記念日。」
冷徹な目の彼女は聞いてくる幼なじみには目もくれず、前だけを見つめて答える。
「何でせっかくの休日にこんなコトするかなぁ。」
明らかに面倒くさいと言わんばかりに、少女はため息混じりで愚痴をこぼす。
「各軍が各々設けた集団演習でウチに負けたことで軍上層部が躍起になっているんですよ。」
先程の冷徹な目の彼女とは別の、夕日のようなきれいなオレンジ色の髪を持つ女性が答える。そんな彼女を少女は恨めしそうに見ながらため息をつく。その女性は少女にはないものをたくさん持っていた。大きく実った胸や引き締まったくびれ。そして年相応の背丈。要は出る所が出て、引っ込む所が引っ込んでいるナイスバディなのだ。
 この三人が立っているのは何もない荒野。だが、今日だけはただの荒野ではなかった。彼女たちの目の前には戦争で使われるような重機が並べられ、その前には各々得意な武器を刃引きされた状態で持っている、各軍の精鋭部隊の兵士達が今にも襲いかからんと目を爛々と輝かせている。
 そう。軍事演習だ。陸海空軍全てが参加し、紅白に分かれてこの建国記念日という日にその一年の成果を出し合う。・・・はずなのだが、今回は少々違うようだ。たわいもない会話をしている彼女たちのいる紅組は明らかに数が少なすぎる上に、彼女たちの目の前にあるような重機は一切ない。
その差は少女達十数人に対し、総勢千人を軽く超える。しかもその千人超の兵士達は全軍から選りすぐられた軍の精鋭ばかり。簡単に言うと、彼女たちは十数人で全軍のエリート全員と闘わなければならないのだ。
 しかし、この差でも彼女たちに軍は遠く及ばないだろう。

国王直属精鋭騎士団「ルナ・ワルキューレ」

それが彼女たちが所属する部隊の名前だ。国内屈指の武芸の才に加え、強力な心力や、それに値する能力を持つ人間によって構成される女性のみの部隊。それが、ルナ・ワルキューレ。国王直属の新鋭騎士団は二つの部隊を持つ。その内一つは先程の「ルナ・ワルキューレ」。それともう一つ、、同じような部隊ではあるが、男性のみの部隊「ソル・ゴッデス」。
二つは同じような部隊でありながら役割が違う。ルナ・ワルキューレは軍の教導や騎士団が必要な重大事件や任務の先攻突入が主な役割であり、ソル・ゴッデスは国王の直務や軍や警察などの監視係が主な役割である。男女別々の理由は一つ。この国では男性よりも女性の方が遙かに心力が高いのだ。
よって、この軍事演習もルナ・ワルキューレのみの参加である。しかし、これが彼女たちの劣勢に傾くことはまずない。彼女たちの能力や、武芸の才は、こんな模擬弾、刃引きされた武器の、人が死ぬことのない軍事演習では軽く全軍精鋭を抑えるほど高いからである。
「・・・なんで精鋭だけにしちゃったんだろうね。負けるのがわかりきってるのに。私たち、なめられてるのかな?ね、ジュミ姉?」
少女が少々不機嫌になりながらもおもむろに口を開く。
「軍にも面子があるのですよ。あんな女だけの少数部隊に数では挑めないってね。・・・では、早く終わらせて休日を満喫しましょう。では、頼みましたよ、クー、ラン。」
ジュミ姉と呼ばれた、オレンジ色の髪を持つ女性、「ルナ・ワルキューレ騎士長」ジュミナ・ノーサーが武器である身の丈ほどもある大剣を軽々と肩に担ぎながら答える。
「了解。では、狙撃班と共に迎撃地点に向かいます。」
クーと呼ばれた、冷徹な目を持つ女性、「ルナ・ワルキューレ副騎士長」クー・グランチェットが回れ右をしながら答える。
「了解デシ!じゃあ情報部は索敵と隠密行動に入りまぁす!」
ランと呼ばれた少女、「ルナ・ワルキューレ副騎士長」ラン・フェイは元気にその場を走り去っていく。

今、彼女たちの休日返上軍事演習が開始されようとしていた。
 

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