文章

□かわいそ村
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「で?何かあったのかいリーマス。」

「…お兄ちゃんにはかなわないなぁ。」


リーマスは気が抜けたようにカウンターに突っ伏すと、珍しく愚痴をこぼし始めた。



リーマスの上司に、ルシウスという男が居る。
リーマスいわく、ポストイットルシウス。

相手がおとなしい人間だとみると途端に強気に出るいやなタイプで、リーマスはその嫌がらせの対象にされていた。


「最初は書類だけだったんだけど…。」


ルシウスはリーマスのありとあらゆる持ち物に、嫌みを書いたポストイットを貼り付けるようになっていた。
最近ではリーマス自身の背中にまで貼るようになっていて、さすがのリーマスも限界が近いらしい。


「最近は読まずに捨ててるんだけどさ、色白!とか童顔!とか女々しい!とか…結構傷付くんだよね…。」

「…それってさぁリーマス、そいつ君のこと好きなんじゃないの?」

「へっ?え、ちょっと待って…!」


リーマスが慌てて鞄から取り出した書類は、一面にポストイットがびっしりでさすがのジェームズも驚いた。
その一つ一つをよく見てみると…。


「ミュージカルチケット有り…。」

「レストラン予約済み…。」

「日曜日予定なし…。」

「…ほんとだ、思いっきり誘われてる。」


はぁあーっと溜め息を吐くと、リーマスは再びカウンターに突っ伏した。


「好きな子ほどいじめたくなっちゃう人なんだね。」

「やめてよぅ…嫌われてた方がマシだった…。もぅあの職場でやってく自信なくなっちゃったよ…。」

「そんなに嫌いなのかい?」

「書類見たでしょ?何もかもをあの状態にされるんだよ…。」

「うーん、まぁ変な事されたらすぐにお兄ちゃんに言うんだよ。」

「うん…。あっ!でもこの話シリウスには言わないでね!絶対職場に乗り込んで来ちゃう!」


がばっと起きあがって言うリーマスに思わずジェームズは吹き出した。


「笑い事じゃないよ!ね、わかるでしょジェームズ!」

「あいつはリーマス大っ好きだからなぁ。…あ、そういえばリーマス、シリウスになんか言った?」

「なんかって?」

「へこませるようなこと。」

「…ちゃんと仕事行きなよって言ったことかな?」

「それだ。」


さぼっていたわけではないものの先生と交渉して好きな時間に仕事に出かけるシリウスに、つい当たってしまったリーマスだった。
自分はポストイットの待つ職場に行かなければならないのだから無理もない。


「気持ちは分かるけどさリーマス、優しくしてやってよ。あいつすごい可哀想な顔してたよ。」

「可哀想な顔?」

「そ。こんな感じ。」


ジェームズは携帯の画面をリーマスに見せてよこした。
そこには…









(´・ω・`)










「あは、あるあるそういう顔してること!」

「そっくりだろ?君のことが絡むと特に可哀想だから。かわいそ村の村長さんだから。」

「かわいそ村!あはははっ!」

「…ねぇリーマス、僕はもちろんシリウスも君のことが大好きなんだよ。だからもうちょっと頼ってやってくれないかな?せっかく一緒に住んでるんだから。」

「…ん、わかった。」


急に真剣な表情を見せたジェームズに、リーマスもしっかりと頷いた。

そして自分のせいでしょぼんとしているかわいそ村の村長さんの為に、今夜は気合いを入れて夕飯を作ってあげようと心の中で決めたのだった。





to be continued...

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