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□双子座流星群
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どのくらい時間がたっただろうか。
姿を見せない流れ星に、自然口数は少なくなる。
けれど、厚い雲が切れて星が見え始めているのも確かで諦めることができない。
夜空を見つめたまま、ジェームズがぽつりと言った。
「なぁ、願い事、考えたか?」
「…流れ星が見たいっていうのが今のところの願い事だな。」
「はは、言えてる。」
「リーマスはどうなんだよ?…あれ?」
「…寝ちゃったみたいだな。」
そもそも普段のリーマスだったら起きているはずのない時間だ。はしゃぎ疲れて眠ってしまったのも無理はない。
「起こすか?」
「いや、可哀想だから寝かしとこう。」
言いながらもジェームズはリーマスの柔らかい頬をつついている。
シリウスも反対側の頬をつまんだ。
「帰るか。」
「…うん。」
二人がリーマスをおぶって帰る決心をして、名残惜しげに空を見上げたときだった。
「あっ!!」
一筋の光が、流れた。
「おいっ見たか今の!!」
「う、うんっ!」
「あ!またっ!!」
「すっげぇー…!!」
立て続けに流れた星に、二人は食い入るように夜空を見つめた。
「そ、そうだ願い事…えっと…!」
「うわ、また!」
「今の見たか?!双子座からシリウスに向かってった!」
「あぁ!流れ星が三つ子座を繋いでくれた!」
夢中になって星を追ってはしゃいで、流れ星が一段落したところでようやく二人はリーマスが眠ってしまっていたことを思い出した。
「やべぇ、一番見たがってたのはリーマスだったのに…。」
「仕方ないさ。大丈夫、また三人揃って見れますようにっていうのが僕の願い事だから。きっとまたチャンスはあるよ。」
「…そうだな。また俺たち二人で見せてやればいいんだ。」
リーマスを起こさないようにジェームズがそっとおぶって、シリウスがシートを片付けて。
最後にもう一度空を見上げて、三つ子座を目に焼き付けてから帰路についた。
帰る家に恐ろしい現実が待ちうけているなんて、知る由もなかった。
to be continued...