文章
□かわいそ村
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「戻りましたーってうわ、またカレー食べてるのかいシリウス?」
店長のお使いで買い出しに行っていたジェームズは、カウンター席で店長と喋りながらカレーを頬張る弟の姿に呆れたような声を出した。
「食べてちゃ悪いかよ。」
「悪かないけど…よく飽きないな。」
「いいだろ別に。俺はダンブルドア先生のチキンカレーが好きなの!」
「ほっほ、嬉しいこと言ってくれるのぅ。」
ジェームズが施設をでてから世話になっているこのカレー屋は、施設の園長先生であるダンブルドアが店長を勤めていた。
ジェームズは働かせてもらっているばかりではなく、店舗の上階の部屋に住まわせてもらっている。
更に今は客としてカレーを食べに来ているシリウスも、先生のもう一つの副業であるレンタルビデオ店で働かせてもらっていて、先生には感謝の言葉がつきない二人だった。
「カレーもいいけどなシリウス、バイトはどうしたんだよ?」
途端、シリウスの顔がいやそうに歪んだ。
「別にさぼってねぇよ。」
「でも休憩時間内にここまで来て戻れるのかい?」
「…戻れねぇけど。」
シリウスの返事に盛大なため息をついたジェームズに、ダンブルドアは言う。
「いいんじゃよ、暇な店だからの。カレーをうまいと言ってくれとる方がうれしいわい。」
「あんまり甘やかさないでください先生。こいつすぐ調子に乗るんですから。」
「あーもぅ食ったら帰るからいいだろ!ったくぶちぶち…俺の保護者かよ!」
「…保護者だよ?」
にやりと笑ってもっともなことを言うジェームズにシリウスは反論できない。
と言うより、口喧嘩でジェームズに勝てたためしがない。
悔しそうにがしがしと頭をかいた。
「ほら、お金いいから。もう仕事戻んな?」
「…わーったよ。ごちそうさまでした!」
シリウスが店を出ようと席を立ったところで、店のドアが開いた。
「こんにちはー。あれ?シリウスも来てたの?」
「俺はもう帰るとこ。」
「いらっしゃいリーマス。」
「もうちょっと早く来れば一緒に食えたのにな。」
心底残念そうに言ったシリウスは、渋々店を出ていった。
それから一分とたたないうちに園から呼び出しがかかって、ダンブルドアも出かけていった。
* * *