文章

□双子座流星群
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「…流れ星が見たい。」

リーマスが口にした“おねがい”にシリウスは困り果てていた。





先日両親から買い与えられたばかりの本は、星の王子様。

「シリウスにぴったりのタイトルでしょう?」なんてからかい混じりに言われたことにはむくれたのだが、可愛らしい表紙にリーマスは大層興味を示した。


けれど小さいリーマスが一人で読むにはまだ少し難しすぎて、読めないとべそをかいたリーマスにジェームズと交代で読み聞かせてやると決めたのは昨日のことだ。

目を輝かせて聞き入るリーマスが可愛くて、予想外に早く読み終えてしまったのはつい先程。
シリウスが紡いだ最後の一文を噛みしめるかのように黙り込んだあと、ようやく口を開いたリーマスが言ったのが流れ星が見たいというお願いだった。


「…見せてやりたいけどさ、」

「だめ…?」


悲しそうに瞳を潤ませるリーマスにシリウスは言葉に詰まる。

良くも悪くも聞き分けのいいリーマスは、末っ子にもかかわらず普段めったに我が儘を言わない。
そんなリーマスが何か頼んできたときには、全力で叶えようというのがジェームズとの取り決めだった。
だが、こればっかりは自分たちでどうにかしてやれるものじゃない。

かといって無理だと突きつけることも出来なくて、何も言えなくなっているところへ店の手伝いをしていたジェームズが戻ってきた。



「流れ星?」

「そう。おうじさまに会えるかもしれないでしょう?」

早速ジェームズに助けを求めると、リーマスはジェームズにもお願いを始めた。

「それにね、ねがいごと、叶うんだって。きっとおうじさまが叶えてくれるんだよ!」


流れ星に願い事をすると叶う。
それもリーマスが最近仕入れた知識らしい。
王子様の物語とあいまって、リーマスは星に夢見ているようだった。

そんなリーマスの話をじっと聞いていたジェームズが発した言葉に、シリウスは目を丸くすることになる。

「ふぅん…よし、見せてあげるよ。」

「ほんとっ?」


ぱぁっと顔を輝かせたリーマスは、嬉しそうに読めない本のページをめくり始めた。



いとも簡単に約束してしまったジェームズをシリウスはつっつく。


「おいっどうするんだよ!」

「どうって?」

「だから!いくらなんでも無理だろ流れ星なんて!」


喜ばせたいのはわかるが嘘なんてリーマスを傷つけるだけだ。
ジェームズは普段そんな無責任なこと言わないのに、とシリウスが訝しんでいると、眼鏡の奥の眼が自信満々に笑んだ。


「出来るんだよ。今夜なら、ね。」

「はっ?」

「お前もそろそろニュースくらい見るようになった方がいいぞ?」


言いながら笑ったジェームズは、シリウスの頭をくしゃっと撫でた。




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