いつもは、さ。
号令と同時に教室飛び出してくような、さ。
それまでお喋りしてたのに余裕でぶっちぎるみたいな、さ。
あんたちょっとあたしのこと何だと思ってんの?みたいな、さ。
すぐに見えなくなる背中に向かって悪態ついて、さ。
そんなだったじゃん?
そんなだったよね?
「さ・あ・て」
わざとキチンと発言して。
「かーえろー」
「そろそろ行くかぁ」
ヘニャって笑う顔は変わんない、けどさ。
こんな時には見せなかったじゃん?
あたしよか重力余計にかかってるみたいな、さ。
足、ずるずる引きずって歩くみたいな、さ。
そんなの見たことなかったじゃん。
あんたが、練習いくとき。
「じゃねー」
「おー」
重りついたみたいな、なかなか進まない背中に。
あたしは言っていた。
思わず。
何だか悲しくて。
「高瀬ー」
「おー」
「練習がんばれー」
振り向かない背中。
指先だけで返された言葉。
天使になりたい
(どうか)
(あいつにもう一度)
(飛び越える力を)