LOCK ON YOUR HEART
□Lucky Star
1ページ/3ページ
Lucky Star
窓際前から4番目の星
下駄箱前に張り出された模造紙。
そんなモノに心の底から喜んだあの日を、しっかりと覚えている。
(あ、また寝ちゃった)
広い背中が小さく、かくんと動いた。
周りのみんなはノートに写した記号の羅列と先生が得意気に繰り広げる解説に必死で、誰も気付いていないみたいだった。
勿論、先生もシンとした教室に自分の声だけが響くのを気持ち良さそうに演説してるから気付いてない。
この学校の、エースなのに。
あたしの席から見て、二つ前の席の隣に、高瀬くんがいる。
高瀬くんは、強いっていわれる野球部でピッチャー。
二年生なのに、三年生に混じって試合に出てる。
背も高くて、カッコ良くて、更にそんなすごいオマケまでついちゃうから、女子にすごく人気。
もれなくあたしも密かに好きなんだけど、高瀬くんと喋ったことってあまりない。
四月にクラス替えの貼り出し見て、高瀬くんと一緒だったから、友達の前で悲鳴あげて喜んだってそれくらいが関の山。
高瀬くんとよく話すクラスの女子は、明るくっていつもゲラゲラと笑ってる。
あ、全然嫌な人じゃなくて、周りに居る人達に気を遣って、話題振って、笑わせて、最後には結構な人数になって楽しんでたりする。
とてもじゃないけど、あたしには出来ない芸当。
どっちかっていうと、そういうのは聞いてる方が楽しい。自分で面白くなるようなこと言えないし、うまいことも言えない。
高瀬くんの前に出たら、キンチョーしちゃってきっと顔とかも赤くなって、好きだっていうのが一瞬でバレちゃいそう。
部活は部活で、やたら美人のマネージャーの先輩がいる。
前に見かけた時は、そのマネージャーさんから「準太」って呼ばれてて、「ハイ!」と彼女の元にすぐさま飛んでった高瀬くんを見た。
高瀬くんを好きな気持ちよりも、自分の恥ずかしさを優先しちゃうあたしは、こっそり好きでいるくらいが丁度良かった。
臆病だって分かるけど、こっそり高瀬くんを見て、それでじんわりと幸せになれるから、それで良い。
(今日はいいこと、あるかな?)
高瀬くんは肘つく癖があって、だから寝ちゃった時も小さくしか動かない。席替えして高瀬くんを見てたら気付いた小さな発見。
今日も、寝ちゃった高瀬くんを見れたから星1コ。
すぐ傍で声を聞けたら星2コ。
目が合ったら星3コ。
会話をしたら星4コ。
笑顔が見れたら星は5コ。
それがあたしの中での星占い。