飴色REQUIEM
□結末・創始‐1
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1〈結末・創始〉――――オワリ・ハジマリ
夏。蝉が、忙しなく(せわしなく)鳴くころ。
僕は、両親と海外旅行に行くため空港に訪れていた。
その時、僕はこれから訪れる悲劇なんて想像してなくて、寧ろ、これから起こるであろう喜劇に胸を躍らせていた。
何処に行くかは、聞かされていない。
そのためか、いつもより期待していた。
未知の場所、初めてへの期待。それと、ほんの少しの不安。
不安が混じってるとはいえ、まだ、幼い僕の心には充分の刺激であり、興味を引き立て、心地良いものだった。
「母さん、母さん。何処に行くの?」
繋いでいた母さんの手をくいくい、と引っ張って聞く。
聞いたら、興味が薄れるから聞きたくないけど、頭はそのことばっかりで、気づくと質問している。
僕も、子供だからだろう。
未知は、知らないということであり怖いものだ。
母さんは、僕の問いかけに「秘密って言ってるでしょ?」と優しく微笑んで答える。
父さんは手を繋いではいるが、ちっともこっちを見ない。
「父さん。父さんは教えてくれないの?」
顔を覗き込んで、問いかけてみるが「あ?あぁ…」と曖昧に返事をするだけだった。
いつもはもう少しまともに話してくれるのに、と内心毒づきながら、少しいつもと違う感じがするのに気づいた。
しかし、そこまで異様なものではないと思ったから放っておいた。
異様なもの、と言えば。
父さんは、ガイジンで目が青い。
母さんは、日本人で髪が黒い。
僕は、目が青くて、髪が黒い。
加えて、すこし女顔。名前も、父さんがガイジンだから『アズリ』と女っぽい。
日本人にすれば異様。