“投影”〜相手は自分の心を映し出す鏡〜

心理学でいう投影とは、簡単に説明すると、自分の心の中にあるものが映写機の様に外の世界(現実)に映し出される事を言います。

例えば、自分に自信を持てない人がいるとします。
そうすると、周囲もきっと自分を駄目な人だと思っているだろう…と思い込んでしまい、積極的な行動が出来なかったりします。
その結果、他人に良い所を持っていかれる現実が起こり「やっぱり私って…」と落ち込んでしまうのです。
しかも、その「自信が持てない」→「やっぱり駄目だった」という現実に投影される思い込みは、その時限りのものでなはなく、自分自身のパターンとして似た状況を生み出しやすく、連鎖してしまいます。
この連鎖は、相手や周囲の問題でもなければ自分が駄目だからでもなく、自分の中にある『思い癖』が原因になっているのです。
この思い癖は、幼い頃に受けた心の傷から発生するものであり「否定された」「責められた」「理解されない」「どうせ無価値だ」等、人それぞれのスイッチを作り出しています。
自分が思わず感情的になってしまう時や激しく落ち込む時は、そのスイッチを相手に触れられてしまったのかもしれません。
しかし、私達はそのスイッチとスイッチが出来た原因を自分で見つけ出さない限り、その連鎖から抜け出す事は出来ないのです。

大抵の人は、自分が傷つくのは相手が原因だと思い、もともと自分の中に傷があるとは考えない為、こうした苦しみが長く続いてしまいます。
なぜか自分を否定する人ばかりと巡り合ってしまう現実は、決して環境が悪く不運なのではなく、自分の思い方が結果を引き寄せているのであり、そんな時は自分の心の中を見つめ返してみる良いチャンスなのです。

男女の間では、この投影が頻繁に起こります。
例えば、最近彼の気持ちが足りないのでは?と思っている時、彼が何だか気の無い返事ばかりだったとします。
そうすると、彼女がもともと持つ「愛が来なくなる」というスイッチが入ってしまい、彼に攻撃的な態度を取ったり、浮気でもしてるんじゃないの?等という嫌味を言ってしまいます。
本当は彼が悪いのではなく「愛が来なくなる」という思い癖の恐怖心が発端なのですが、相手を責める言動に歯止めが効かなくなるのです。
そうなると、彼はもちろん不愉快な気分になり「俺を好きじゃないのか?」「信用していないのか?」「何だその言い方は!」という喧嘩が起きる訳です。
もしかしたら、彼は仕事で何か落ち込んでいただけかもしれませんし、ひょっとしたら「結婚しようかな」と真剣に考えてくれていたのかもしれません。
よくありがちな男女の責め合いですが、もしこの時、何のスイッチも無い彼女だったら「体調が悪いの?」「何か悩んでるなら話して」という全く違った角度から話をする事ができたでしょう。
自分のせいで彼の機嫌が悪いんだ!というマイナスの思い込みが発生しない為、彼に優しく歩み寄ろうと考えられるのです。

投影は、思い込みという名の様々なサングラスを通して世界を見ているようなものであり、本来の色とは違って見えてしまいます。
そして、自分が辛い気持ちになったのは、相手の言葉や態度に原因があるからだと思い、まず相手に変わって欲しい(環境を変えたい)と願うのです。
しかし、心のお話@でも説明した通り、本来相手を先に変える事は出来ません。
まず自分の中にある傷を見つけ、手放していく事で相手も自然と変わっていくのです。
仮に相手が以前と何も変わらなくても、自分の中にある間違った思い込みが無くなれば、不思議と相手との間の衝突も減っていくでしょう。
恋愛や結婚で、何度話し合いを重ねても解決できない部分は、お互いの傷の投影が大きく影響している可能性が高いです。
「私だって」「俺だって」等の終わりの見えない責め合いは、その代表的なパターンでしょう。
これはスイッチの押し合いであり、大抵のカップルは、この投影の段階から抜け出す事が出来ずに別れを選択してしまいます。
自分の傷が投影されているとは気が付くはずもなく、本当の相手の素晴らしさを見い出せずに終わってしまうのです。
そして自分にはもっと他に良い人がいるはず!と思うのですが、なぜか再び同じような相手を引き寄せてしまいます。

でも、この投影の連鎖から抜け出す事は可能です。
自分が自分と向き合う勇気を持てれば、必ず乗り越えられる日が来ます。
心の傷は、昔から停滞している部分であり、自分の子供心と一緒なのです。
とにかく誰かに分かって欲しいと訴えかけています。大人の自分がその傷に気が付いてあげるだけで、とても楽になれます。
喧嘩や責め合いの絶えないカップルであればある程、それだけお互いに手放すべき不要な感情があるという事であり、今後に大きな希望を持てるのです。

もしも、これを読んだあなたが自分の投影の事実に気が付いたら、まずは自分の中のスイッチを探して原因を突き詰めてみましょう。
時間はかかるかもしれませんが、無理に相手や環境を変えなくても、必ず今までとは見える現実が変わってくるはずです。
目の前にいるパートナーも同じ人だっけ?と思う位に、幸せな時間を過ごせるようになるでしょう。
この変化は相手が変わったからではなく、先に自分が変わった事によりもたらされるの喜びなのです。

最後に・・・
私達は、欠点や何かを失う事ばかりに意識をフォーカスしてしまう傾向があります。
しかしネガティブ(欠点)の裏にはポジティブ(長所)が隠されている事も忘れないで下さい。
長所が欠点に見えたり、幸福や愛を受け取れなくしているのは他でもなく自分自身の思い方です。
明るい現実を見るには、相手とのコミュニケーションよりも、まずは自己の理解が何より大切です。
自分を理解する事なく、相手を知る事は出来ません。

プラス思考だけではカバーしきれない感情に気が付き、手放す事が出来た時、私達は本当の意味で幸せになれるでしょう。
難しいようですが、ありのままの自分を受け止め、愛するだけで良いのです。
相手は自分の心を映し出すもの…
すなわち、自分が自分を大切にした時、相手も自分を大切にしてくれるのです

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