なんでこんな事になったんだろう…
 
 
 
 
どうしてあんな事言ってしまったんだろう…
 
 
 
 
あんな事したくなかったのに…
 
 
 
 
こんな事になるはずじゃなかったのに…
 
 
 
 
私ってどうして、こんな…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
バカなのかな………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     BLACK CAT
     〜長編集〜

   ◆『私と彼女』◆
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ん〜・・・」

私は冷蔵庫の中をみて悩んでいた。悩むのは当然、中身が空だからである。置いてあるのはミルクだけ…これだけでは晩ご飯も作れない

「やっぱ買いに行くしかないよね…」

私はすぐに支度をしてスヴェンに買い物に行く事を告げる…が

「ちょっと待てイヴ、行くならあの野郎も連れて行っとけ。どうせ寝ることと食うことぐらいしか頭にない奴だからな。たまにはコキ使ってやらないと」

あの野郎…と言えば私とスヴェンを除けて一人しかいない。まだ2階で寝ている奴、もう昼過ぎなのに……全くもって気が知れない、まぁその分彼の朝とお昼の食費が浮くんだけど…

とにかくスヴェンに言われた通りその彼を起こしに行く事にした
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コンコン

私は一応ドアをノックして呼び掛けてみる。どうせ寝てるだろうけど…

「トレイン、起きてる?」

「・・・・・」

反応が無い、やっぱり

「入るよ」

ドアノブに手を伸ばし無断でその部屋の中へと侵入する

ガチャ

私はドアの隙間から頭を入れ覗き込んでみた

「トレイン?」

「……ZZZ…」

布団の中からいびきが聞こえてくる。完璧に寝てるのを確認した私はベッドの前まで足を進めた

「トレイン。もうお昼過ぎだよ、起きて」

「ZZZ…」

「買い物にいくから起きてって…」

「ZZZ……」

揺さぶっても反応がない。イラッときた私は怒鳴りつけるように叫んだ。というか怒鳴りつけた

「トレイン起きなさい!」

「・・・・・・ZZZ…」

この男はワザとでやっているんではないのだろうか?私はトレインを包んでいる布団を勢いよく引っぺ返した

バサァッ

「う〜ん…」

今度は効いただろう。寒さのあまりに寝返りをうつトレイン…だが

「えへ…ミルク……うめぇ…」

「・・・・・・・・」

寝言…呆れた、夢でもミルク飲んでるなんて、人は好きな事には意識が高くそれが夢に出てくることがあるらしい。そういう内容を書いた本を読んだことがある。ということはよっぽどミルクの事が好きなんだろう

…って、そんなことはどうでもいい。早く起こさなければ晩ご飯が作れなくなってしまう。私は勢いよくトレインの上にのしかかってやった

「起きてよッ!」

体全体を使って揺さぶり起こそうとするが全く起きる気配がない

「…お前も…ムニャ……飲むかぁ…」

しかもまだ寝言を…こうなったらトランスハンマーで…

「…なぁ……サヤ…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     トクン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・」

「ZZZ…ムニャムニャ…」

「ワッ!!」

「おわぁッ!」

耳元で大声で叫んでやるとさすがのトレインも目が覚めた。眠そうな目でこちらをみる

「・・・・・…姫っち…か…」

「姫っちか…、じゃないでしょ」

「どした?そんな怖い顔して?」

「いつまでたっても起きないからだよ!もうお昼過ぎているんだから、いつまでも寝てないでいい加減働いてよね!」

「べつにい〜じゃん。この前高額の賞金首を捕まえたんだから」

「それは一昨日の話でしょ!とにかく、今から行く買い物に付き合ってもらうからね!早く用意してよ!」

バタンッ

私は勢いよくドアを閉めその部屋から出た

「なんなんだ?姫っちの奴?」
 
 
 
 
「・・・・・」

なんでだろ?なんだかとっても腹が立つ。トレインが早く起きなかったから?

いや…違う。理由はわかっている…私は…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「姫っち〜もういいじゃねぇかぁ。帰ろうぜ〜」

私達は大荷物を持って夕方の街を歩いている。早くも根をあげるトレイン

「ダメ、こうゆう買い物が出来る機会は少ないんだから、今のうちに買い溜めしとかなきゃ」

「買い溜めって…、なら姫っちも少しは持ってくれよ!」

「バツだよ、バツ」

「ありえん…」

もちろんトレインはいつも遊びほうけている罰として荷物持ちに使っている。まぁ、初めからそのつもりでトレインを連れてきたんだけど…

「ん〜?なんだ?」

「なんだろ?」

ちょっと離れたところから騒がしい音がする。私たちは気になってその音がする方向に足を進めた
 
 
 
 
 
 
 
「あ、お祭り」

そこは食べ物やオモチャなどの沢山の屋台があり、沢山の物が売り出されている。そして大勢の人が行き交っていた

「へぇ、こんなところでも祭はあるんだな」

「楽しそう…」

私もお祭りに参加したい、けど今は買い物をしている途中だしなぁ…

そこで私は屋台のおじさんに聞いてみた

「すみません」

「いらっしゃい。何にします?」

「いえ、ちょっと聞きたい事があって」

「なんだい?」

「このお祭っていつまでやっているんですか?」

「夜10時ぐらいまではやっているハズだよ。この祭はね、最後にはでっかい花火が打ち上げられるんだよ。あれは暗ければ暗いほど綺麗に見えるからね。見なきゃ損だよ」

「そうですか。ありがとうございます」

そのぐらいの時間だったら晩ご飯を食べた後にでも来れそう

「よし。あとでまた来よっと…」

スヴェンも連れて来よう…あっ、リンスやアネットも呼んでみようかな?
つれて行きたい人の顔が思い浮かぶ、大勢の方が楽しいからね。

でもやっぱりこういうイベントの時は…

チラッ

「…トレイン…」

「ん?」

「トレインも…スヴェンのついでだけど…後でお祭り…べ、別に来たいならいいよ。ついて来ても…」

ちょっとワザとらしい誘い方…だったかな?

「う〜ん…まぁ、考えとくわぁ」

「や、約束だからね」

「?…あ、ああ…」

「よし。じゃあ行こう」

私は遊びたい気持ちともう一つの気持ちをを押さえ、その場を後にした
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「お肉もよし野菜もよし。電球とかも…うん、だいたいの物は買ったかな?」

「帰るのかッ!?」

必死な顔でこっちを見てくる。さすがに量が量か、そろそろ許してあげよう

「そうだね、これぐらい買っとけば結構もつと思うから、…帰ろうか」

「ウッシッ!とっとと帰ろう!」

なんて嬉しそうな顔、相当きつかったのかな?ちょっとやりすぎたかも…

よし、今日は特別トレインに美味しい物食べさせてあげよう

少し罪悪感を感じた私はトレインにお礼をすることにした

「……あ…」

そんな私に、一つの着物が目についてしまった

見つけてはいけない物だったのに…

「・・・・・」

「どうした姫っち?」

私の目線をたどってトレインも着物を見る

「こりゃ浴衣じゃねぇか」

浴衣、本で読んだことがある。たしか東洋人女性がよく着る着物で、特に夏祭りとかに着て行くことが多いとか…白く輝く絹を羽織っておりピンク色の花柄、とっても綺麗…でも

「なんだ姫っち欲しいのか?」

「ううん…」

私は首を振って否定する、本当は着てみたいけどお金に余裕がない

「ところでなんでトレインが浴衣の事知っているの?」

聞くべきではなかった。聞きたくもなかった…でもこの浴衣を見つけた時点で私は終わっていた

「ん?それは…、アイツがよく着ていたからな」

「………」
 
 
 
 
アイツ…トレインの言うアイツ、私はトレインの横顔から見える目を見てその人の存在を理解してしまった

楽しそうに遊んでいる時の目
寝起きの時の眠そうなの目
獲物を追い詰める時の悪戯な目
そういうトレインの目は好き
 
 
 
 
でも…今の…
 
 
 
 
彼女を思っているこの目は嫌い…
 
 
 
 
私が映っていない…
 
 
 
 
彼女しか映っていない…
 
 
 
 
彼女で満たされているから…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「………やっぱり…」

「ん?」

「やっぱり欲しい」

「欲しいのか?」

「うん」

あんな目は見たくない、あんな顔をするトレインももうたくさん

それだったら…
浴衣を見て彼女を思いだすのなら…
私がそうならないようにしてあげる
 
 
 
 
私が…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
       二
       度
      思と
      い彼
      出女
      さを
      せ
      な
      い
      よ
      う
      に
      :
      :
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なんなら俺が買ってやろうか?」

「え?」

「俺からのプレゼントだ」

「い、いいの?」

「ああ…」

「で、でも…」

トレイン…お金ないのに…

「嫌だったか?」

「そ、そんな事ないっ!」

「だったら決まり♪」

「あ、ありがとぅ…」

初めて貰うトレインからのプレゼント。なんで急にプレゼントしてくれたのかはわからないけど…とっても嬉しい。

でもこれが、最初で最高で…『最悪』のプレゼントになるなんて、今の私には知るよしもなかった
 
 

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