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□哭く身体
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訳もなく身体が哭くんスよ。恋しいと切ないと震えるように哭くんスよ…。
《哭く身体》
貴方はずっとずぅっと雲の上で暮らしてきた人で、俺はずっとずぅっと地べたを這いつくばって生きてきた奴で…。始めから違い過ぎてた。
貴方が俺を抱いたのは、只の興味本位の戯言だと思ってた。お姫様達に飽きた戯れだと…。
俺が男に抱かれる事に慣れてるのを知った時、少しその綺麗な顔を歪ませた。
『あぁ、やっぱり…』
例え戯れでも、嫌っスよね。何人もの流魂街の汚い男達が通り過ぎていった身体なんか…。
貴方は、汚いモノなど見た事ない人だし、俺は汚いモノしか見た事ない奴だから、貴方に抱かれる事さえ相応しくない。
なのに…貴方は…
『愛している』
と、口にする。
止めて下さいよ冗談は。そんな事、本気にする訳ねぇじゃねぇっスか。俺は貴方の玩具で充分っスよ。貴方の気が向いた時に遊んでくれる玩具で充分なのに…。
貴方は抱く度に、俺の耳元に囁き続ける…
『愛している』
と…。
酷い人っスね、貴方って人は。本気にしちまうじゃねぇっスか。愛されてる…なんて分不相応に自惚れちまうじゃねぇっスか。
だから…
貴方に抱かれない夜は、この身体が哭くんスよ…。恋しいと…切ないと哭くんスよ。
間違ってるって解っていても、貴方の『愛している』を信じようとして、この身体が身悶える。
俺は…、貴方の玩具で充分で、それ以上じゃないのだから…。
だから…だから…。
優しくなんてしねぇで下さい。抱き締められると心が砕けちまう…。
この卑しい身体は止められなくて、貴方が欲しいと震え続ける…。
『愛して欲しい』と哭き続ける。