唄ERIES NOVEL

□Sweet★Sweet[完結]
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夕方、閉店間際のスーパーは、殊の外混んでいた。
奥様方は、割り引きシールが貼られるのを横目で睨み、今夜以降の食卓をシュミレーションする。

「う〜ん、やっぱ肉は欠かせないからなぁ」

オレンジ頭の青年は、奥様方に混じり、腕を組んだ。
その横で、緋髪の長身の青年は、買い物カゴを持たされ、皆の熱気に煽られ、ポヨンと立っていた。

「なぁ恋次、何食べたい?」
「ん…?任せる…」
「そ〜ゆ〜の、一番困んだよなぁ、解る?」

まるで、毎日の献立に頭を悩ませる、主婦のような台詞。
何気に『牛ロース』をカゴに入れようとして
「豚にしろ」
と怒られた恋次としては、口を挟める雰囲気ではなかった。

「あ、刺身なんか…」
「あぁ〜?」
語尾の上がり具合は…『んなモン、買えねぇよ』で、すり上がるような視線は『もっと、安いモンにしろ』だった。

「一護…」
「ん…?」
「お前…恐えぇよ」

そう言われて、一護は眉間の皺を倍増させる。

「仕方ねぇじゃん、学生なんだから、贅沢は出来ねぇよ」
「金なら…」
「駄目だ!」
「何でだよ、貧しいんだろ〜がよ、お前」
「貧民みたいな言い方すんな。ど〜せ、あの白哉さんが『お前がちゃんと、食事が出来るか心配だ。はした金ゆえ、持って行け』とか言っちゃって持たせたんだろ?」
「…まぁ、当たらずとも…」
「お前、箱入りだもんなぁ、世間知らずだし」

一護は人目も憚らず、恋次の手を握る。




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