10/20の日記
08：46
《十月の風/Ⅵ》
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此処から始めよう。
もし、恋次の記憶が戻らないならば、此処から始めればいい。
一護はそう思った。
「名前…は？」
「一護…、黒崎一護」
「いちご…、どう書くんだ？」
「一つを護る…」
「そう…か」
「大学生」
「学校は…？」
「あ～、恋次が事故にあってから…行ってない、か」
「大丈夫なのか…？」
「大丈夫…、その事は言ってあるから、心配ない」
「なぁ…」
「ん？」
「変な事を聞くよう…だけど…」
「なに…」
「俺…、お前の事…好きなのか…？」
「え…」
「あ、すまん。やっぱり変だよな。男のお前に言う事じゃないよな」
「変…じゃねぇよ…」
今度は恋次が驚いた顔をした。
一護は座り直すと、ゆっくりと二人の事を話し始めた。偶然に逢って、今は一緒に暮らしてる…と。
「きっと、俺の方が恋次の事…好きだと思う…」
一護は、少し恥ずかしそうに笑った。
「いや…、俺は変わんねぇ気がする」
「恋次…」
「目が覚めて…お前を見た時、なんて言っていいのか…あぁ、居てくれた…て、思ったんだ。そばに居てくれた…て」
「離れる訳ねぇじゃん」
「なんだか…安心した…。理由は上手く説明出来ないが…安心したんだ。お前が、俺の手の届くトコに居てくれたから…」
「恋次…」
「……頭ん中に靄がかかったみたいでハッキリと思い出せない…。だけど…、お前…一護を愛してる…て事は、何故だかハッキリとしてた」
「うん…」
「俺だけが、こんな事を思ってるのか…て、不安になって…」
一護はゆったりと恋次を抱き締めた。今まで聞きたくても聞けなかった事を…恋次が口にしてくれた。
不安だったのは…俺の方だ…。
恋次はいつだって、自由に翔んでっちまう…。子供の俺を置き去りにして…。
そんなふうに思ってた
「一護の事を…早く思い出したい…」
「もう…いいや」
「なにが…?! 一護は…」
「俺の事…好きだったんだって思い出してくれただけでいい…。それ以外はオマケみたいなモンだもん」
「一護…」
「早く身体を治して、あの部屋に帰ろ。記憶は…無理に思い出そうとしなくたって…いい」
「そう…だな」
「恋次…愛してる…」
「あぁ…、俺も一護を愛してる…」
恋次の腕に抱かれて、恋次の心臓の音を聞きながら…一護は目を閉じた。
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