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□永遠のキズナ 番外編
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「……!綱吉……っどこか痛いのか……?!」
「……っちが……違うよ……」
「だって,お前………」
綱吉の瞳からは大粒の涙がこぼれそうになっていて,有利は慌てふためいて何も言えないし何もできなくなってしまう。そうしている間にも綱吉はついに涙をあふれさせて,そのまろい頬に次々と涙の線を作った。それを無理やり服でぬぐおうとする手を止めたのは,コンラートである。
「ダメですよ……強くこすったら赤くなりますし,眼球も傷つけてしまうかもしれない。これを……」
ポケットからハンカチを取り出したコンラートは,優しくそれを目じりに押し当ててやった。
何せこの後は雲雀達が計画したサプライズが控えているのである……綱吉に泣かせたあとが残っていたら,それどころではなくなってしまうだろう。しかし,次から次へと流れる涙は止まることを知らなかった。
「つ,綱吉……どうしたんだよ?俺,変なこと言ったかな……」
「違う……ごめんね,有利…っく,そんなんじゃなくて………」
「なら……?」
「ただ,嬉しくて……皆がこれからどう生活するかなんて……俺は,見にいく勇気はないけれど,皆がこれ以上,戦ったり傷つけあったりするのがすごく嫌で……だから,有利がそれを肯定してくれたことが,すごく嬉しくて……!」
綱吉は誰かに「綱吉がやったことは悪くはないんだよ」と言ってほしかっただけなのだ。それが,例え言葉だけだったとしても……だけど有利は,それを心から言ってくれた。別に雲雀が言ってくれなかったわけじゃない。でも彼は,あまりその話題に触れようとはしなかった。彼はただ綱吉に寄り添って,普段の穏やかな生活を送らせてくれたのだ。それも,綱吉の心を解きほぐす一つの要因となっている。
だけど,今の有利の言葉で綱吉のかたくなだった心の氷は瞬く間に解けていった……それとともに,どうしても流すことのできなかった涙も出てきてしまったのだ。
だから,これは必要である涙……止まるまで流しておくに限る。
痕が残るのはあまりいただけないが,コンラートはそう判断して,綱吉のハンカチを握らせてやった。彼の好きにさせてやるのが一番だろう。
と,コンラートの持っている携帯が鳴る。
「おっと……失礼」
綱吉から少し離れて確認する。メールは臨也からであった。準備が完了したとのこと……あとは綱吉が帰ってくるのを待つばかりなのだろう。段々落ち着きを取り戻してきた綱吉の様子を一瞥してこれから戻る旨を伝えて携帯を閉じる。
そんな様子を有利が少し緊張した面持ちで見つめていた。
「ユーリ,ツナヨシ……ヒバリから連絡です。夕食ができたそうですよ。そろそろ戻りましょうか……涙も,止まってきたみたいですね」
「すみませんコンラートさん……これ,後で洗濯してお返ししますね」
「気にしないで大丈夫ですよ。さ……行きましょう」
少年二人を促して,コンラートは瞳の赤い綱吉についてどう説明するか,考えを巡らせるのだった。
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